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【短編集】現実だってファンタジー
かえるの墓守
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 この墓ではたまに見かける子だ。

「よっ、マリちゃん」
「今年も精が出ますね、カエルさん!これどーぞ!『あやかし祭り』の準備のご褒美に貰ってきたカッパラムネですよ!」
「いやぁ、有り難ぇ!こう無縁仏が多いと流石に疲れて喉が渇いちまうからね!」

 カッパラムネは幽霊、亡霊、妖怪の好む飲み物だ。名前の通り河童が作ってるらしく、人間の飲むラムネとは違う「生の反対」の成分が何とも言えない刺激をもたらしてくれる夏の風物詩だ。

 そして、それを持ってきた彼女は既知の亡霊であり、幽霊や地縛霊に比べて妖怪に近い存在だ。
 彼女は彼女で、別の意味で墓に縛られた珍しい亡霊でもある。

「今年も君のお墓はピッカピカだよ。生前に幼馴染だったっていう葛城くんだっけ?彼も律儀だねぇ」
「えへへへへ………(じゅん)君ったら本当に生真面目よね!でもそこがスキなのっ♪」

 キャピッ♪とよく分からないポーズで嬉しがるマリちゃんは、その葛城という生きた男にぞっこんだ。

 何でも、彼女と葛城――下の名前は順一郎――くんは10歳の頃に友達だったらしい。
 随分仲が良く、一緒によく遊んでいたそうだ。
 だが、マリは事故によってこの世を去り、彼女の家族も崩れるように寿命や病死などで死んでいき、一家の墓はあっという間に無縁仏になっちまった。マリはその頃から亡霊として人を祟ってた。自分は幼くして死んだってぇのに、他の生きている人間が妬ましくなっちまったんだろう。

 だが、そんな無縁仏に葛城くんはしょっちゅう訪れては花を添えたり、汚れた墓石を拭いたりとしっかり管理してくれた。霊的な能力は皆無だったが、友達想いの彼は20歳になろうかという今もずっと墓を守ってる。
 そんな彼のひたむきに親友を想う姿に、マリも次第に人を祟ることが少なくなり、未練が消えていった。代わりに胸を満たすのは暖かい想い。そして成仏してハッピーエンド……となるはずだったんだが。

「はぁぁ〜〜〜♪恋っていいものですよカエルさん!!それが証拠に、何年経っても順君への想いが止まりません!!」
「好き者だねぇ、マリちゃんも………喋れもしねぇのに」
「電子系の妖怪さんに頼んで秘密のメル友してますから!うぅぅぅ、迸る愛よ順君に届けっ!!」

(同刻、葛城は金縛りにあった上に夢の中でマリに纏わりつかれ、「え、俺恨まれてんの!?」と勘違いしていた……)

 マリちゃんは葛城君を愛するあまり、彼の存在そのものがこの世の未練になってしまった。
 本当に珍しい。霊の見える相手に憑りつくのはよくあるが、霊感もない相手を害する目的もなく憑くってのは聞いたことがねぇ。そして彼女が最も愛を感じる瞬間が、彼の墓参りってな訳なのだ。

 まぁ、ああいう風な理由で輪廻の環に「かえる」ことをしないん
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