コヨミフェイル
014
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当然か」
「そうですよ。私は何も知りません。阿良々木さんが知っているんですよ」
「当たり前だろ」
「いや、意外と知っていなかったりするんですけどね。まあ、それより、聞かせてくださいよ」
「うん?」
「事件のことですよ」
「ああ。う〜ん、まあ、要点だけかい摘まんでなら話してもいいか」
それぐらいの時間はある。影縫さんに説明したときよりずっと短くして話した。しかし、どこを省くかを考えながら説明したために影縫さんに説明したときより時間がかかってしまった。それに加えてこれから実行する作戦のことまでも話したことも原因である。そのだらだらと長い説明を斧乃木ちゃんは鼻歌混じりに聞いていた。
「なんか大変そうですね」
終始ぐだぐだだった僕の説明を聞き終えて扇ちゃんが放った言葉である。
「他人事だな」
「そうですか?そういう風に聞こえたのでしょうが、かなり自分事なんですがね」
「ん?ああ、家業だもんな」
「いえいえ、自分事ですよ。阿良々木先輩が関わっているのですから自分事ですよね?」
「僕はそこまで扇ちゃんと親しくなったつもりはないんだけど」
「寂しいことをいいますね。まあ、友好は後日温めることにします」
扇ちゃんはそう言って前を向いた。
「ん?ああ」
釣られるようにして前を向いた僕の視界にうっすらと見慣れた建物のシルエットが浮かび上がった。
「作戦成功するといいですね」
「ああ。何か、ごめん。ここまで付き合わせたみたいになって」
「いえいえ、それはこっちの台詞ですし、最終確認のためですから」
「最終確認?」
「ん?何のことです?」
いや、扇ちゃんがほんの一瞬前に言ったこと何だけど。僕の聞き間違えかな?
んー、扇ちゃんの反応を見る限り、僕の聞き間違えで間違いなさそうだ。
「これで三竦みに一歩前進です。では、また、明日会いましょう」
ん?さん……すくみ……?何だそれは?
確かにそう言ったよな。一言一句聞き漏らしたりしてない。神に誓って聞き漏らしたりはしていない。なんなら物真似で一から全部言ってもいい。
これは聞き間違いじゃない。
なら、何なんだ?新しい別れの挨拶か?そんな別れの挨拶は寡聞にして知らないけどな。
聞けば良いんだろうが、扇ちゃんの背はもうすでに遠くの点となってしまっている。
「また会ったときに聞けばいいか」
と、頭の隅に追いやってペダルを漕いだ。
当然このときの僕は後に蝸虫――なめくじの近縁種――や蛇がからむ事件に巻き込まれることになるとは予想だにしていなかった。
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