R.O.M -数字喰い虫- 3/4
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。差し当たっては、その交友関係などはどうだろう。
「嫌いだったのかい?彼女の事を」
「それは………確かに美咲は友達だけど!友達だって腹が立つことはあるでしょ!?」
「うおっ!?な、何だ突然!」
彼女はどうも親友のことが絡むと途端に積極的になるきらいがあるらしい。それほどあの少女が彼女の心にとって重要なウェイトを占めているということだろう。両手を振り下ろして不満を露わにする彼女の姿はまさに年相応で――だからこそ、続く言葉に林太は固まった。
「だって美咲はいつも芋虫のことで私をからかって来るからっ!一回くらい芋虫で苦しめばいいんだと思って……図形をそういう風に改変したんです。なんとなく、やり方は分かったから。日記と同じで永続的な効果はないと思って……」
「つまり、アレかい。君、個人的なイタズラのためだけにこんな物騒なモノを………?」
「物騒じゃない、筈だったんです……でも、やって初めて間違いに気付いて……!!何度も書き直そうとしたんですけど、脳の根底部分に刻まれちゃったから今更取り除く方法が分からなくて……!!」
ぞっとした。そんな、子供のいたずらのような感覚で、都市伝説の原型にまでなる悪魔の数式を作り上げた少女に。林太は心底恐れると共に、彼女が本当に困っていたことを理解し――そのうえで、言葉に形容できない感情を彼女へと抱いた。
それは憤りなのか、憐れみなのか、同情なのか、切なさなのか、ごちゃ混ぜになった感情はしかし、自分の中で言語に表す必要のない一筋の想いへと編みこまれていった。
本当に取り返しのつかないことを、ほんの些細な理由で実行してしまった。
彼女はそのことを確かに深く反省し、それを償おうとしているのだろう。
だが、この世界は全て『虫』のいいように事は運ばず、捻じれた運命は拗れた顛末を引きずり出す。そのことを、彼女はまだ本当の意味で理解できていない。
「――分かっているのか、美咲ちゃん。俺は確かにメリーに任せれば助かるとは言った。だが、代償が伴うとも言った筈だ」
「え……でもその代償さえ払えば芋虫の幻覚は消えるんですよね?」
「ああ、消えるだろうさ。――でも、メリーは神じゃないし、都合のいい存在であっても万能の存在にはなれない。だから、『もう取り返しがつかない』ことはしっかり理解しておくんだな」
春歌はまだ理解しきれていない顔をしている。目の前の希望の意味を理解せずに、それに手を伸ばせば自分の罪が消えるとどこかで考えている。だから未だに美咲の事であれほど饒舌になれるのだ。
代償を払えば助かるというのは、既に喪うことが決まっているということだ。
喪ったものは、決して戻ることはないのだ。
それとも、彼女もまた喪わなければ気付けないのかもしれない。
両親と何も
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