R.O.M -数字喰い虫- 3/4
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日記でしか情報を得る事は出来ませんでした」
「――なんだって?日記……ということは、君のおじいちゃんがヨクジンだって言うのか?」
春歌は静かに首を横に振って、分かりません、と答えた。
彼女のおじいさんは随分前に老衰で亡くなってしまったそうで、日記は死後発見されたという。
「ただ――ヨクジンは、少なくとも日本では大和朝廷が成立する以前から存在していた、一族か、血統の繋がりのような存在……らしいです。おじいちゃんがそのヨクジンなのか、それともその手下のような存在だったのか……ヨクジンという言葉は断片的にしか登場しなかったので、その辺りははっきりしませんでした。そもそもその日記も40年前の火事で半分ほど燃えていて、詳しいことを知る術はありませんでした」
「曖昧だな。人なのかどうかも確認が取れないが……目的は?主義とか宗教とか、何か分からないのか?」
「秘匿とか干渉をしないとか、守秘的な考え方があったみたいで……日記にも殆どその辺は書いてませんでした。ただ……やり方について行けないとか、使命が歪んだとか……とにかくおじいちゃんはヨクジンから離れたかったんだと思います」
彼女の目を見る限りでは嘘をついている様子はなく、必死に自分の持つ情報を思い出してるように見えた。ただ、未だ彼女自身がヨクジンである可能性や、隠し事をしている可能性は拭えない。
「それで――美咲ちゃんに見せたあれは、何?」
今はもう都市伝説の一つとして社会に急速に拡散しつつある『数字喰い虫』の源、『数学の繭』。
あれは既に概念化し、彼女の使ったオリジナルとは本質が変容した都市伝説だ。人から人へと語る継がれるうちに形を変え、あれはその辺に転がる都市伝説と同じレベルの存在となった。
その原点となったあの模様の正体は一体何なのか。あれはヨクジンの何なのか。
「あれは………あれは、おじいちゃんの日記の最後のページにあったんです。そこだけは燃えずにはっきり残ってて、なんとなくだけど見ていて理解できたんです。これは、人の心に干渉するものなんだって。多分だけど、本当はヨクジン以外が見れば記憶を消すようなセキュリティの意味があったんだと思います」
「……では、君も?」
「多分、ですけど。私はおじいちゃんの持っていた因子のようなものを強く受け継いで生まれたんだと思います。家族はみんなこれを見ると日記の存在そのものを忘れてしまいました。でも私だけは……これの意味が分かりました」
「なら何で『数字喰い虫』なんてものが彼女の頭に現れた?」
ノートの図形が日記のものと一緒なら、彼女は精々勉強内容をすっからかんに忘却するだけで済んだはずだ。それならばまだ、今ほど深刻な問題にはならなかった筈だ。しかし、春歌は首を横に振った。
「……全く同じものじゃ、ない
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