第十一話 南雲大尉!!本人は水雷出身だった!!その十二
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「お金はいいですよ」
「何故でごわすか」
「いつも日本、世界の為に働いてくれている西郷さん達からお勘定なんて貰えませんよ」
だからだというのだ。
「お金はいいですよ」
「そうはいきもうさん」
だが西郷は親父にこう言うのだった。
「お店に入り注文したのなら」
「お金は払うのですか」
「それが決まりでありもっそ」
それでというのだ。
「おいどん達はお金を払うでごわす」
「どうしてもですか」
「どうしてもでごわす」
絶対に、というのだ。
「そうするでごわす」
「左様ですか」
「たこ焼きをどんどん焼いて」
そしてだった、見れば店の横にはビール缶達が氷を入れたボックス達の中に相当な数があった。それも見て言うのだった。
「ビールもでごわす」
「買われるのですね」
「そうするでごわす」
「何か悪いですね」
「悪くないでごわす」
決してと返す西郷だった。
「当然のことでごわす」
「それじゃあ」
「焼いて欲しいでごわす」
そしてそのたこ焼きとビールを買うというのだ。
「そうさせてもらうでごわす」
「わかりました」
親父もここで頷いた。
「それでは有り難く」
「食べさせてもらうでごわす」
決して特権を振りかざすことはしない西郷、そして山本と東郷だった。そしてそれは南雲も同じだった。華道の稽古場でだ。
時間になりだ、場所を貸してくれている家元にこう言った。
「では時間ですので」
「帰られますか」
「そうさせて頂きます、家元の練習時間になりましたので」
「いえ、私のことはいいのです」
六十近い和服を着た夫人だ、家元は南雲のその騎士を思わせる端正な美貌の顔、海軍衆の士官の軍服を着て正座し花を生けている彼の正面に向かい合って正座して告げた。
「大尉は間もなく決闘ですね」
「はい、この華道での」
「ならより修行に励まれたい筈です」
彼のことを慮っての言葉だ。
「ですから私のことは気にせずに」
「いえ、家元も展示会が近いです」
南雲はその彼に落ち着いた物腰で応えた。
「ですから」
「帰られますか」
「私は家でも修行が出来ます」
それ故にというのだ。
「場を特別に提供して頂き勿体無い位です」
「日帝衆の方でしたら」
家元は畏まった態度で答えた。
「構いません」
「この場を長い間お使いしても」
「はい、大尉が宜しければ」
「いえ、好意には甘えるものではありません」
やはり真面目に返す南雲だった。
「ですから後は」
「ご自宅で、ですか」
「はい、そうさせて頂きます」
「そして後はですね」
「家元の稽古をされて下さい」
「お心遣い痛み入ります」
家元は大尉の言葉に確かな声で返した。
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