第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十九日:『息吹くもの』
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」
「カァッチィ〜ン……なんだな」
……断じて、親友である。その筈である。青筋立てて舌鋒を交わし合い、睨み合う三人は。
全く同時に丹田に気を廻らせ、それを総身に、腕に、足に染み渡らせ─────
「────それまででェェェい!」
練武館を揺らした大号令に、全てが動きを止めた。練武館の三階席、別名『天守閣』と呼ばれる観閲席に座してこの乱戦を眺めていた────和服に白髭を蓄えた壮年の男性、この学園の校長である『五輪 飛燕』。
「通例であれば、最後の一人となるまで終わらぬのがこの乱戦の常……しかし、あろう事か生き残っているのは三年のみ。情けない……恥を知らぬか、二年! そこの三人は、貴様らの時分にはもう其処に立っていたぞ!」
不甲斐ない下級生に向けられた怒号に、九十七人全てが震えた。それだけの圧力を備えた、低く恐るべき声だった。人の心をへし折る声だった。
「此度は此処まで……次回は八月末! それまでに鍛え直しておけい!」
踵を返し、陣幕の奥に消えた校長を見送り、百人は一斉に安堵を漏らした。無論、嚆矢達三人もそうであり。
「……じゃ、帰ろうぜ。ジュゼ、マグラ」
「おう、どっか寄ってくんだぜ?」
「軽く飯でも食うんだな」
「お前の軽くは俺らの重くだから」
交戦の構えを解き、出口に向けて歩き出した。その道々。
「有り難うございました、先輩!」
「勉強になりました!」
そんな風に頭を下げられ、軽く手を振りながら。着替える面倒さからそのまま帰る事として。
数分後の日盛りの最中、うんざりする暑さを掻き分けながら歩く。傍らには竹刀の先に防具をぶら下げた主税と、浴衣を着て扇子を扇いでいる間蔵。
「じゃあ、『坂上の雲』で暇潰すか」
「よっしゃ、じゃあイくんだぜ」
「文句なしなんだな」
今日は風紀委員の活動は昼からの許可を得ている、どこか近くの喫茶店で時間でも潰そうと、校門を歩み出た。
「へぇ、風紀委員の活動を投げ出してまで、何処に行かれると?」
「坂の下にさ、うちの学生を狙い撃ちにしたみたいにコッテリ且つガッツリな定食屋が……って、黒子ちゃん?!」
多数の弐天巌流学園生徒から注目を浴びつつその校門に寄り掛かっていた、黒子に冷たく問われたのだった。
………………
…………
……
「本当、貴方の不真面目には驚かされますの。これは固法先輩に報告させて頂きますわ」
「違う違う、違うよ黒子ちゃ〜ん。俺はただ、学友との旧交を暖めようとしてただけでさ、決して面倒臭くて風紀委員の活動を先延ばしにした訳じゃないんだよ〜。あ、昼飯食べた? まだなら是非奢らせてほしいなぁ、だから是非みーちゃんには内緒の方向で」
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