抉りて殺せ (3)
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─金蔵の書斎─
あれからだいぶ時間が経った。止みそうにない雨の音が、真里亞との談笑の間で鳴る。
儀式の方は順調に進んでいるだろうか。
あと数時間で『今日』が終わる。それと同時に『世界』が終わる。
それまでには、終わらせておかないとな...。
「うー...」
「どうした、真里亞。眠いのか?」
今の今まではしゃいでいたのだ。眠くなるのは仕方ない。
赤い目を擦りながら必死に寝まいとするが、首はコクリコクリと動く。かなり眠そうだ。
「ほら、金蔵のベッドで眠れ。ベアトリーチェが来たら教えてやるから」
「うー...うー...」
「寝れないのか。...じゃあ、昔話をしてやろう。真里亞が忘れてしまった昔話を」
渋々ながらも、それで納得したようだ。真里亞には大き過ぎるベッドに寝かせ、その傍らに腰掛けると昔話を始めることにした。真里亞とベアトリーチェが、マリアージュ・ソルシエールを完成させて数ヶ月経ったある日に、俺と初めて会った時のちょっとした昔話だ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
─数年前─
今日も金蔵から呼び出し。今回もベアトリーチェに会うための話し合いだ。
相変わらず庭の薔薇は美しい。手入れがよく行き届いている証拠だろう。こればかりは、頭が下がる思いだ。
まだ、約束より時間があるな。早く行ったところで、待たされるのがオチだ。引退した身とはいえ、全く用事が無いというわけではない。未だに島の外から大手の会社や銀行の人間が訪れる。
ま、伝説を作ってしまった者の運命だな。
散歩でもして暇を潰そう。確か、向こうの方に東屋があったはずだ。
薔薇庭園を進む先に、屋根の付いた小さな建物が見えてくる。そこには、楽しそうな笑い声を上げる少女たちがいた。
「......っと、お邪魔だったか?」
「......」
「そんな風に警戒しないでくれよ」
...無理か。
睨み付けてくる幼い少女の前には、魔法陣や呪文が描かれた書物が置かれている。
俺の視線に気付いたのか、少女は書物を慌てて胸に抱いた。
「俺の名は、右代宮 狼銃。金蔵の友人だ」
「............」
「またの名を、ローガン・R・ロスト。元老院の魔女たちは《虚無の魔導師》と呼ぶ」
「!?」
お、2人とも反応したな。
幼い少女ではない、もう1人の少女に視線を送る。...ああ、そうか。こいつが......。
「お前がベアトリーチェか!」
「なっ!?」
「当たりだな。なるほど、あとは金蔵次第ということか」
愛がなければ見えない。誰が考えた言葉だったか、もう覚えてはいないが..
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