第百九十三話 高天神からその六
[8]前話 [2]次話
「その時にな」
「左様ですか」
「そうじゃ、それはもうすぐじゃ」
「徳川殿と合流し」
「そしてじゃ」
武田との決戦の時にというのだ。
「わかるからな」
「畏まりました、それでは」
柴田もここで言わないことにした、それで信長は家臣達にこうも言った。
「今度の戦では攻めぬ」
「敵をですな」
「武田を」
「そうじゃ、攻めずにな」
そうせずに、というのだ。
「敵が来るそこをな」
「逆に、ですか」
「迎え撃つのですか」
「そういうことじゃ」
「しかし殿」
原田が信長に問うたのだった。
「数は我等の方が」
「上じゃな」
「しかしですな」
「御主もわかっておろう」
原田に対して言うのだった、信長は今度は。
「相手は武田、迂闊にせめてはな」
「やれれるのはこちらですな」
「そうじゃ、相手はあまりにも強い」
兵達に率いる二十四将と幸村、そして何よりも総大将である信玄がだ。まさに武田は虎であるというのだ。
「迂闊に攻めるよりもな」
「迎え撃ち」
「そうして倒す」
この考えだからだというのだ。
「攻めずにじゃ、先陣もじゃ」
それもというのだ。
「設けぬぞ」
「攻めずに迎え撃ち、ですか」
「そうして」
「そうした考えじゃ、ではよいな」
「はい、それでは」
「この度は」
「ではこのまま岡崎に向かう」
まずは家康を救うことだった、信長は大軍を率いてだった。
その大軍で岡崎に着いた。徳川の者達は織田のその大軍を見て誰もが目を見張ってこう言った。
「何という数じゃ」
「うむ、あれだけの数とはな」
「二十万か、これだけの兵が一度に来るとは」
「これまでなかったことぞ」
本朝において、というのだ。
「織田殿がそれだけの大軍で来られたからにはな」
「我等は助かったな」
「では後はな」
「うむ、長篠じゃな」
あの城に向かおうという話に自然になった、
「あそこに向かうことになるな」
「いよいよな」
「そうなるのう」
こう話すのだった、そして家康も。
岡崎城の櫓から織田の軍勢を見てだ、大久保に対して言った。
「信じられぬ数じゃ」
「ですな、最早見渡す限りです」
大久保も主に応えて言う。
「青です」
「織田家のな」
武具も旗も鞍も全て青にしている織田家だ、その軍勢が二十万だ。それだけの大軍が岡崎城の周りに来たからだ。
「その軍勢が来てくれたからな」
「ですな、そしてこの軍勢で」
「武田家と戦じゃ」
「そうですな、しかし」
ここでだ、大久保はこの現実を主に言った。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ﾍﾟｰｼﾞ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿ｻｲﾄ〜
利用規約/ﾌﾟﾗｲﾊﾞｼｰﾎﾟﾘｼｰ
利用ﾏﾆｭｱﾙ/ﾍﾙﾌﾟ/ｶﾞｲﾄﾞﾗｲﾝ
お問い合わせ
2024 肥前のﾎﾟﾁ
しおりを解除