第百九十三話 高天神からその四
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「わかったな」
「はい、さすれば」
高坂も信玄の言葉に応える、そうしてだった。
武田家はその設楽ヶ原にも人をやり間も無くはじまる織田家との戦に備えていた、もう戦ははじまっていると言えた。
そしてだ、信玄は今度はだ。馬場に顔を向けてこう言った。
「御主は長篠城を攻めよ」
「そうして攻め落とすのですな」
「出来ればな、しかしじゃ」
「堅固であるならですか」
「強く攻める必要はない」
それは止めるのだった。
「我等はあくまで織田に勝つことを目指す、それならばな」
「あの城は、ですか」
「攻め落とさずともよい」
特に、というのだ。
「高天神さえ手に入ればですな」
「では御館様」
原が信玄に問うた。
「高天神を足掛かりにされるのですか」
「そうじゃ、あの城に兵糧等を集めてな」
そのうえでだとだ、信玄も原に答える。
「そのうえでじゃ」
「織田と戦いますか」
「高天神の守りを固めじゃ」
そして、というのだ。
「そのうえで織田と戦うのじゃ」
「その織田ですが」
穴山が信玄に言うことはというと。
「数と鉄砲、それに槍ですな」
「その三つじゃな」
「それで戦う軍勢でありますので」
「だからじゃ、迂闊には攻めぬわ」
信玄と言えども、というのだ。
「策は考える」
「その策ですが」
真田昌幸、幸村と彼の兄である信之の父である彼が言って来た。
「敵の数が相当なので」
「まともには攻められぬな」
「かといって夜襲等が通じる相手ではありませぬ」
彼もわかっているのだ、信長が尋常な者ではないことだ。それで夜襲についても無理だと看破しているのだ。
「待ち伏せ等も見抜かれまする」
「それで、じゃな」
「正面から攻めるしかありません」
戦うのなら、というのだ。
「そしてその戦い方ですが」
「どうすべきというのじゃ」
「兵を敵の真ん中に向けて集めてです」
そうして、というのだ。
「一気に攻めて敵陣を破るべきかと」
「鶴翼に対する魚鱗じゃな」
「その様に戦うべきかと」
「その通りじゃ、御主の言う通りじゃ」
これが信玄の返答だった。
「ここは兵を真ん中に集めて一気にじゃ」
「攻めてそのうえで」
「勝つ、そうするぞ」
信玄は真田の言葉を入れて家臣達に言った、そうしてだった。
高天神城に拠点を定めそのうえで織田との戦に本格的に備えさせた、そして攻め落とした城もだった。万全の備えで自軍の背も固めていた。
信長は軍を三河に入れてさらに進めていた、その中で武田の動きも調べさせていた。そうして今の彼等の動きを聞いて言うのだった。
「長篠は誘いじゃ」
「我等を誘い出す」
「それですか」
「そうじゃ、そして誘い出してじゃ」
そのうえで、というのだ。
「然
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