第三十五話 月光の下でその十一
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「八条グループとかな」
「そうよね、それも」
「考えれば考える程な」
それこそ、というのだ。
「ないんだよな」
「何か謎ばかりで」
「わからねえな」
「手掛かりも」
それもだった、桜も言うのだった。
「何もありませんし」
「わかってるのは怪人の身体のDNAだけでな」
その鑑定結果、まさにそれだけだった。
「他はな」
「手掛かり一つなくて」
「謎ばかりって状況は本当に変わらないな」
それも全く、という口調での言葉だった。
「参ってるよ」
「そうね、けれど今はね」
菫も薊に言うのだった。
「このことについて考えることもいいけれど」
「観光か」
「考えてもわからないことを考えても仕方ないわ」
「菫ちゃんも気になるよな」
「気になるわ」
このことはだ、菫も同じだった。
だがそれでもだ、菫はこう言ったのだ。
「それでも、考えてもどうしようもないのなら」
「考えることを止めてか」
「他のことをしましょう」
「そっちの方が現実的か」
「そうなるわね、けれど実際にそうでしょ」
「ああ、考えても仕方ないよ」
実際にそうだとだ、薊もここでこう言った。
「こんなことはな」
「そういうことでね」
「じゃあ船を楽しむか」
薊も菫の言葉に前向きになった、そうしてだ。
一行は船に乗った、そして琵琶湖の中を遊覧するのだった。そうして琵琶湖の水、そして周りに見える街や山を見てだった。
薊はしみじみとしてだ、こう言った。
「これも関西か」
「うん、滋賀県も近畿だからね」
鈴蘭がその薊に答える。
「ここもそうよ」
「関西っていっても本当に色々なんだな」
「関東だってそうでしょ」
「ああ、それぞれの場所で全然違うよ」
関東もまた然り、とだ。薊は鈴蘭の問いに答えた。
「神奈川でもさ」
「横須賀と横浜で違うのね」
「空気が違うんだよ、それと川崎や厚木でも」
同じ神奈川県でもというのだ。
「本当に違うんだよ」
「そういうことよ」
「だから関西もか」
「そうよ、それは滋賀でも同じで」
「ああ、北の方があれだよな」
薊はその琵琶湖の北の方を見つつ述べた。
「小谷城があったんだよな」
「浅井家ね」
黒蘭は薊の今の言葉にすぐに返した、戦国大名の一人で織田信長と戦い滅んだ家の一つである。最後の当主浅井長政は信長の妹であり絶世の美女であったお市の方の夫でもあった。
「あの家ね」
「あそこだよな」
「そうよ」
「それで西の方に」
今度はそちらを見た薊だった。
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