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水車の側で
第七章
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第七章

 こうしてピットと彼の率いる中隊は生き残った。しかしだった。
 水車の周りにはだ。イギリス軍とドイツ軍の将兵達の遺体、そして負傷した者達がそのまま転がっていた。生きている者は苦しい声をあげている。
 それを見てだ。ピットはこう言うのだった。
「勝ったことは勝ったけれどな」
「そうですね。のどかだった光景が台無しですね」
「これじゃあ」
「酷いものだな」
 ピットの声はうんざりとしたものになっていた。
「全くな」
「そうですね。こっちも随分やられました」
「戦死者は十人です」
 まずは戦死者から話される。
「負傷者は十七人」
「派手にやられましたよ」
「そうだな。水車に護られていてもな」
 それでもなのだった。彼等はそこまでやられていた。
 そしてだ。周りを見るとだった。
 あちこちに手榴弾の爆発で派手な穴が開いている。緑の平野にだ。
 黒い異様な穴が無数に空きだ。無惨な姿を見せていた。
 そして水車達もだ。銃撃によりだ。
 あちこちに弾痕がありボロボロになっている。羽根もだった。
「もうこの水車どれも使えませんね」
「修理が必要ですよね」
「絶対に」
「そうだな。そうしないと駄目だな」
 ピットもこう兵士達に答える。その水車を見ながらだ。
 その間も水車達は動いている。そしてであった。
 水車がだ。動きを止めた。その止めた時だった。
 十字の白い羽根がだ。十字架の形になった。ピットはそれを見てあることを思い出した。それが何かというとである。
 彼はだ。それを言葉に出して言った。
「そういえばな」
「そういえば?」
「何かありますか?」
「いや、オランダで人が死ぬとな」
 彼等が今戦っているだ。そのオランダの話だった。
「水車を十字架にしてな。今みたいにな」
「今みたいにですか」
「そうするんですか」
「それで死者の冥福を祈るらしいな」
 生き残った兵士達にこんな話をするのだった。
「そうらしいな」
「それじゃあ今ですね」
「そうですね」
 兵士達もここで言った。
「今の俺達ですね」
「ドイツ軍も含めて」
「戦死した人間のですか」
「冥福を祈ってるんですか」
「だからだ」
 また言うピットだった。
「こうしてな。十字になったんだ」
「そうなんですか。俺達のせいでボロボロになった水車が」
「俺達の為にですか」
「因果なものだな」
 ピットはその無惨な姿になった、羽根にさえも所々に弾痕のある水車達を見上げながら述べた。彼等は今全員水車の外に出ている。
「戦争っていうのはな」
「そうですね。のどかな光景が忽ちこんな有様になって」
「何もかもが壊れて死んで」
「そうなってくんですからね」
 兵士達もだ。しんみりとした口調になって述べた。
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