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アットゥン
第七章
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「お袋は何て言ってるかだ」
「はい、お義祖母さんはです」
「いいって言ってくれたわ」
 二人は真一に話す前にこう答えたのだった。
「お義祖父さんも」
「勿論お父さんとお母さんもね」
「うちの両親に連絡したらいいって言ってくれました」
「後は叔父さんだけなの」
「俺は五稜郭の土方さんか」
 地元の観光地になっているその城で死んだ新選組副長の名前が自然に出た。
「いや、違うな」
「大坂城かしら」
 由里がにこにことしてこう例えを出した。
「今の叔父さんは」
「外堀も内堀も埋められたか」
「そう思う?」
「実際そうだろ、内堀まで埋められたらな」
 難攻不落と言われた大坂城もこれで引導を渡された、そして夏の陣で焼け落ちてしまい豊臣家は滅んだのである。
「しかしあえて言うぞ」
「何てなの?」
「俺は何も言わないからな」 
 半ばムキになった言葉だった。
「応援も邪魔もな」
「この場合は肯定も否定もよね」
「ああ、しない」
 これが彼の二人への言葉だった。
「勝手にしろ、式は何時だ」
「まあそれはこれから」
「話して決めるから」
「そうか、ただな」
「ただ?」
「ただっていうと」
「式の時はアイヌの服も着ろよ」
 真一が出した条件だった、実質的に。
「いいな、絶対にな」
「俺もですか」
「そうだ、お色直しはしていいけれどな」
 智樹にも言うのだった。
「その時はな」
「アイヌの服もですね」
「着ろ、御前もな」
「そうしていいんですか」
「由里がアッドゥンを着ているのを見て好きになったんだろう」
 このことから言う真一だった。
「そうだよな」
「はい、確かに」
「なら着ろ、俺もアイヌ人の血が流れてるしな」
 勿論姪である由里にもだ。
「御前も薄くても入ってるだろうしな」
「蒙古斑があるとですね」
 俗にそう言われている、日本人の多くは幼少時は蒙古斑があるがこれがあるとアイヌ人の血が入っているというのだ。
「あれがあると」
「あったよな、御前も」
「そうみたいですね」
「ならだ、御前も着ろ。なくてもこう言ってたぞ」
「どっちにしてもですか」
「ああ、御前等を結びつけてくれた服だからな」
 それならというのだ。
「式の時は着ろ、いいな」
「わかりました」
 智樹は真一の言葉に笑顔で頷いた、そしてだった。
 二人は実際に式の時にアイヌの婚礼の時の奇麗な服も着た、そして智樹はその場で由里に彼女が店に着ていたものとはまた違うアットゥシをプレゼントした。そうして末永く幸せでいることを二人で誓った。その式が終わった時にだ。
 ようやくだ、真一は智樹に二人のことについて笑顔で言った。
「由里を大事にしろよ」
「絶対に」
 智樹も確かな顔で答える、真一は笑顔で彼
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