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【短編集】現実だってファンタジー
虫を叩いたら世界は救われるか検証してみた・雷の章
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て、超えたかったんだ」
「ならば、誇れ……よ……天帝を打ち破ったことを……誉とせよ。祝福……しよ、う……」

次の瞬間、その雷は次元の壁を突き破って天帝ごと空間を貫いた。

天帝はゆっくりと、ゆっくりと――背中から倒れ伏し、それ以上動くことはなかった。

その顔は呪縛から解き放たれたかのように晴れやかだった。

「へへ……気持ちよさそうにくたばりやがって。でもまぁ……良かったよ。テメェと戦えて、さ」

体力を使い果たしたカシアスは息絶えた天帝の隣に座り込み、やがて大の字になって倒れた。


――その後、地上では特大の雷が空を貫いた後に何も起きなかったことからカシアスの勝利を確信したバンプ・ライバー達は一気にエンシェント・ライバーを押し返し、とうとう人類と翼の民は決着がついた。
天帝を喪ったエンシェント・ライバーの大半が戦意を消失し、人類存亡をかけた勝負の決着はついた。

以降、救世の英雄となったカシアスは魔須禍羅諏を手厚く葬り、エンシェント・ライバーとの共存社会構築に尽力したという。戦いの最中に遭った苛烈な姿はなりを潜め、終生その命を翼の民との対話に費やしたという。
決して敗者を貶めようとしない戦士の姿に、翼の民の多くは亡き天帝の面影を彼に見たそうだ。

それから約100年――翼の民は人類と交わり、二つの種族の差は殆ど無くなっていたという。



そして、カシアスが放った全身全霊の雷は次元の壁を越え、ある世界へと送り込まれつつあった。
 
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