第一部 学園都市篇
断章 アカシャ年代記《Akashick-record》
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少女。
比翼の鳥か比目の魚か、或いは連理の枝か。金と銀の、黒と白のドレスの。太極図を描くように、互いの右手を重ねあった姿で。
「わたしの……ワタシ……」
「……ワタシの……わたし」
安らかな寝息に混じり、金の少女と銀の少女が同時に寝言を漏らす。全く同時に、右手を握り合う。
互いに互いが『見えない』筈の、その二人。それでも、繋がっているのだ。繋がろうと、願い合っているのだ。
────では、どうする。『己』は、何をするべきか。何が為せるのか、何が出来るのか。
(決まっている。俺は、もう誓っている。他の誰でもなく、俺自身に)
うっすらと涙ぐんで見える二人、その姿に誓いを新たに。最早迷う事すら無く、背後から囁く“影”に応える。
己の右手を、一度握り締めて。重ねるべく伸ばした、それを。
────素晴らしい。君は、資格を得た真の“魔人”だ。私達と同じ……“夢見るもの”だ。
(ッ……!)
男の声だった。女の声だった。子供の声だった。老人の声だった。正義を望む声だった。悪を看過する声だった。全てを知る声だった。何一つ無い声だった。何より────その先を渇望する声だった。
“悪心影”ではない。その狂気、悪意、邪悪。例える対象すら見当たらない、思い至らない。そんな、一つだけでも狂死しそうなモノが────無数と蠢いているのを感じて、金縛りのように動けなくなり。
急速に闇に消える視界に、覚醒の刻の訪れを知る。背後の存在から逃れられる事に対する僅かな安堵と、そんなモノが犇めくこの世界に彼女達を残していかなければならない無力と嘆き。
「覚えてろ……必ず、また来る……!」
そして、“正しき怒り”を胸に。
────嗚呼、楽しみに待っているよ。我々全員で、ね。
辛うじて振り向いた先、蠢く無数の“影”。此方をせせら笑い、狂い舞う無数の────
………………
…………
……
アラームの音が響く、簡素な室内。メゾン・ノスタルジの時室内。外では、小鳥がチュンチュンと睦み合いながら鳴いている。
その音源である携帯の目覚まし機能を解除し、布団の中で嚆矢は。
(あと……五分)
寝惚け眼で、夏用の薄手のブランケットを被り直そうとしていた。側頭部のすぐ横まで迫っている、否、すぐ横から現れたドロップキックに気付かぬままに。
「────いい加減に起きやがれですの、この不良風紀委員っ!」
「──────」
ツインテールな後輩のドロップキックに、声すら上げられずに顔面を撃ち抜かれたのだった。
「黒子ちゃんんん、幾らなんでもこれはァァァ! あと、ミニスカでそんな事しちゃ不味いよ!
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