A's編
第三十二話 裏 後 (クロノ、リィンフォース、グレアム、リーゼロッテ、なのは)
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だから、オペレータたちが喜ぶのもわかる。わかるが、残り二フェーズも残っているのだ。ここで気を抜かれては困る。
「気を抜くなっ! これからが勝負だ!」
クロノ―――中身はリーゼロッテだが―――が一喝すると少しだけ弛緩した場の空気が一気に引き締まる。その様子に満足しながらリーゼアリアは前線を示すモニターから目を離すことなく戦況を見つめていた。
フェーズは第二フェーズへと移行済み。第一フェーズが闇の書を捕縛結界にとらえることを目的にしたものならば、これからは現状維持が第二フェーズだ。正確には捕縛結界内部にとらえた闇の書の完全に復活する前の魔力が落ち込む瞬間を長引かせるというものだろうか。
闇の書が完全に覚醒する直前、人が跳躍する前に膝を曲げるように一瞬だけ魔力の落ち込みが確認されている。それは前回の忌まわしき事件で観測された魔力だった。そして、完全に覚醒した状況では無理でも、その魔力量であれば、グレアムがリミットを外した状態で氷結魔法―――時すらも凍らせる魔法を使えば、時空という名の牢獄に闇の書を封じることができることを確認している。
シミュレーションの結果では上々だった。だが、闇の書を捕縛し、魔力の底を維持し、グレアムが氷結魔法をぶつけるという三つの段階をシミュレーションすれば、成功率は万全とはいえなかった。今回、成功したのは―――
―――彼女の手柄だね。
闇の書が十数人の武装隊にとらわれているのは気付いているのだろう。だが、近衛ともいえる魔術師たちは高町なのはの守護騎士たちによって足止めされているし、襲われればひとたまりもない竜たちは竜滅者≪ドラゴンスレイヤー≫が相手にしている。横やりが入りにくい状況だ。この状況を作ってくれた高町なのはには賞賛を送りたい。
事態は順調に推移しているといっても過言ではないだろう。捕縛された闇の書は懸命に―――しかし、どこか緩慢に結界から抜け出そうとしているが、十数名からのA級の武装隊。さらには、陣形により魔力を強化している彼らからの捕縛、および魔力封印結界から抜け出すのは並大抵のことではない。
先ほどの捕縛された瞬間からとは180度異なる緊張が支配された艦橋に響くのはオペレータの闇の書の観測データと―――闇の書が捕縛された映像とは別アングルから映された一人の老人から朗々と発せられる魔法の詠唱だけだった。
『悠久なる凍土』
目をつむり、氷結魔法専用デバイス―――デュランダルを構えるグレアムから、その表情はうかがえない。しかしながら、その胸中にはどんな感情が渦巻いているのかリーゼロッテにはわからない。
『凍てつく棺のうちにて』
安堵だろうか、後悔だろうか、懺悔だろうか、しかし、それがどのような感情だとしても、終わりを告げる瞬間は近づこう
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