A's編
第三十二話 裏 後 (クロノ、リィンフォース、グレアム、リーゼロッテ、なのは)
[8/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
きことに変わりはないのだから。
「うむ」
一言でうなずいた後、スクリーンに映る戦場に背を向ける。これからグレアムも画面越しではない本物の戦場に向かう。思えば、彼が戦場に立つのはいかほどぶりだろうか。指揮官という立場から久しく戦場には立っていなかった。英雄とまで呼ばれたほどの男が、だ。
だが、それでもこれから戦場に立つのに不安はなかった。ようやく、ようやくという思いだ。それは自分の指揮が失敗してしまい、失ってしまった部下の仇が打てるからではない。彼の脳裏に思う浮かぶのはたった一人の少女。彼のエゴのために孤独を与えてしまった少女のことだ。
逃げられる、解放される。ああ、なんと都合のいい現実なのだろうか。
彼女を人身御供としようとしているのに。それでも、それでも、確かに彼女を犠牲にした罪悪感を忘れることはない。だが、彼女が一人で暮らしている姿を見ることはないだろう。寂しそうな顔をしている姿に、胸がズタズタにされるほどの痛みを覚えることはないだろう。
楽になれると一瞬でも考えてしまった自分が浅ましい。だが、だが、それでも、それらの汚名を傷を負ったとしても、やるのだ。やりきると決めたのだ。そうでなければ、彼女が抱えた孤独感も何もかもが無駄になってしまう。それだけは阻止しなければならない。
「………せめて彼女の次の目覚めでは幸福でありますように」
彼女が目覚めるころには生きていないであろうグレアムにできることは、次元をまたぐ組織の中で英雄ともてはやされた男ができたのは、情けないことに、ただただ犠牲となる彼女の次の生の幸福を祈ることだけだった。
◇ ◇ ◇
『捕縛結界、設置完了。目標への効果―――確認。第一フェーズ完了しました』
リーゼロッテは祈るような気持ちで前線から次々に上がってくる報告を聞いていた。本来、ここにいたはずのリーゼアリアは、今は結界設置部隊の一人として前線に立っている。グレアムが前線に立たなくなって、リーゼ姉妹も前線に立つ機会はほとんどなく、久しぶりと言ってもいい。それでも、彼女は無事に自分の役割を果たしたようだった。
実際、三つあるフェーズの一つを超えただけなのに、艦橋では「よしっ!」「やった!」などの歓喜の声が上がっていた。
当然といえば、当然だ。作戦の成功率はそれなりに高い数値をだしているものの、相手はあまりに悪名高いロストロギア『闇の書』。正直言えば、前線で相対している武装隊員たちは死地に赴いているのと変わらない心情だろう。
できるだけ練度の高い武装隊員を集めた。熟練度を上げるための訓練期間もとった。やれることはやった、といっても過言ではない。それでも、それでも不安が残るのがロストロギアという厄介な代物なのだ。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ