A's編
第三十二話 裏 後 (クロノ、リィンフォース、グレアム、リーゼロッテ、なのは)
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彼は自分の置かれた状況を確認しているのか、ぱちぱちと目を瞬かかせ、やがて目の前でゆっくと自分に近づいてくるなのはを視界に入れたのか、安心したように微笑むとゆっくりとその小さな唇を開いた。
「―――あ、なのはちゃん」
彼が彼女の名前を呼んだ瞬間、なのははゆっくりと近づいていた歩みをぴたっと止める。
「どうしたの?」
彼は不意に近づいてくるのをやめたなのはを不審に思ったのか、今まで笑っていた表情をひそませ、小首をかしげ、問いかける。だが、そんな彼の問いになのはは答えず、ただ俯いて何も言わない。
「ねぇ、なのは「黙れ。贋物」
―――Divine Buster
なのはからの返答はさらに名前を呼ぼうとした彼の声に被せるように、有無を言わせぬ迫力をもって返された。直後にすっ、と持ち上げられたレイジングハートから放たれたのはなのはが得意とする砲撃魔法。その威力は推して知るべし。
予備動作もなく、クイックドローのように打ち放たれたディバインバスターは翔太の姿をした彼に反応を許さず、その姿を桃色の魔力光の奔流に飲み込まれた。そのあとに残ったものは何もない。翔太の姿をした彼は、その桃色の魔力光に飲み込まれ、影すら残さなかった。
「なぜ気付けた?」
目の前で人が消えたというのにきわめて不思議そうに抑揚のない声でリィンフォースがなのはに問いかける。そんな自らの行いに何も感じていないリィンフォースに対して、なのはは怒りの形相で自らの思いのたけを叫ぶ。
「わかる。わかるよっ! だって、ショウ君とは見た目以外全部違ったっ! 呼吸のリズムも、首の傾げ方も、飛行魔法の使い方も、私の名前の呼び方もっ! それに―――ショウ君が私の名前を呼んでくれたら、それだけで嬉しくなるのに、あれが私の名前を呼んだときは嫌な感じしかしなかったっ! そんなのショウ君の形をした別人だっ!!」
「―――非論理的だ。だが、それが人間なのだろう」
親の仇でも見るような目つきでリィンフォースを睨みつけるなのはに対して、リィンフォースは不可解というような表情を浮かべていた。
「だが、カーテンコールも近い。少々の戯れも許せ」
「―――許さない」
レイジングハートを握りしめ、誰もが震えあがりそうな威圧感と怒気を発するなのはに対して、小ばかにするように嗤うリィンフォース。彼女はさらに大舞台に立つ役者の様に、背後に数百に及ぶ竜たちを指揮するように両手を広げる。
「さあ、続きを始めよう。私も負けるわけにはいかない。マスターのために」
決意のこもったリィンフォースの言葉に反応するように先ほどと同様に集まる光。それはやがて人型を作り出す。先ほどと異なる点はその数だ。3つの人型がリィンフォースの周囲に作られ、
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