A's編
第三十二話 裏 後 (クロノ、リィンフォース、グレアム、リーゼロッテ、なのは)
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が止まることはなかったが、意識は闇の書の彼女へと向けていた。
「あの少年が返れば、あなたが戦う理由はなくなるはずだ。私はこれ以上あなたに邪魔されたくない。だから、返そう」
「………本当に?」
なのはにとって目的の一番は翔太だ。八神はやての救出は確かに翔太が望んだことではある。だが、それでも、それでも何よりも優先されるのは翔太の安全なのだ。だから、それが嘘かもしれない、という危機感を持ちつつもなのはは闇の書の言葉に耳を傾けざるを得なかった。
なのはの返答から好印象を得られたと思ったのだろうか、微笑みを強くした闇の書は今まで竜たちを指揮していた動きをなのはからやや離れたところで止め、ついでに竜たちも彼女の後方へ退避させた。
彼女のやや不可解な動きになのはも警戒し、竜たちが退避させるのに合わせてヴォルケンリッタ―たちを自分たちの近くへと退避させる。
なのはは彼女の言葉が信じられなかった。どうして、一度手に入れたものをそう簡単に手放そうとするのかと。だが、その一方で翔太を返してもらえるという言葉を無視することはできない。その甘言が罠である可能性があるとしても、一方でわずかでも可能性があるというのなら、それは――――
「―――わかったよ。だから、ショウ君を返して」
「承知した」
簡潔な言葉のやり取り。もともと敵同士なのだ。無駄なやり取りは必要ない。リィンフォースはなのはに戦場から脱出してほしく、なのはは翔太のために戦っている。ならば、問題はない。
リィンフォースが集中するように目をつむる。その両手は何かを生み出すように目の前に突き出される。もしも、ここで砲撃魔法でも打ち出されれば、なのはに直撃することは間違いない。もっとも、なのはもそれを警戒し、防御魔法を展開できる準備をしている以上、リィンフォースが打ち抜けるはずもないのだが。
やがてリィンフォースからやや離れた場所に黄金色に輝く光が集まる。それは砲撃魔法の様に球を描くわけではなく、ゆっくりとではあるが、人型を描いていく。大きさは変身前のなのはとほぼ同等だ。それらの光が完全な子供の人型を作った瞬間、光がはじける。
まるで光の膜を破ったようにはじけた光の膜の中にいたのは、なのはもよく知る姿。なのはがもっとも望んだ彼の姿。眠っているように眼を閉じ、聖祥大付属小学校の男子の制服に身を包んだ彼は消えた直後とは異なるが、それでも確かに彼だった。
「―――ショウ君」
目の前にずっと望んでいた彼の姿を確認することができて、なのははつぶやくように彼の名前を口にしながら、伸ばした手で彼を望むようにふらふらと彼に近づく。その名前を呼ぶ声に反応するようにリィーンフォースが作り出したと思われる光の膜の中から現れた翔太はゆっくりと目を開く。
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