A's編
第三十二話 裏 後 (クロノ、リィンフォース、グレアム、リーゼロッテ、なのは)
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「有難い。この事件が終わった後の報酬は期待しておいてくれ」
「そうさせてもらいますよ」
クロノの言ったことが冗談とでも思ったのだろう、ユーノが苦笑しながらクロノの言葉に応える。クロノとしては、ユーノたちの頑張りには目に見える形で応えるためには報酬という形しか思いつかなかっただけなのだが。
何か勘違いしていそうなユーノに何か言うことを考えたが、今はそんなことをしている余裕はないことはわかっていた。なぜなら、もう作戦は始まっているのだ。一人の少女を犠牲にした世界を救う作戦が。
「それじゃ、行こうか」
―――たった一人の少女を救うために。そして、ついでに世界を救うためにクロノは部屋から走り出した。
◇ ◇ ◇
戦況は一言でいうと停滞していた。
シグナムの斬撃が、ヴィータの鉄槌が、ザフィーラの拳が、シャマルのバインドが、そして、なのはの砲撃が竜を落とす。だが、直後に空いた穴を埋めるように竜がすぐさま召喚される。まるでイタチごっこだ。
事態を打開できないことに業を煮やしたなのはが竜たちの間を抜けるように突貫し、超近距離による砲撃を試みるも、竜たちの密度が高く、また同時に闇の書本体からの攻撃も加わったことにより、不発に終わった。
もちろん、打開策としては、なのはのJSシステムを使った最大砲撃があげられるが、翔太が闇の書に捕まったままの状態で実行できるはずもなかった。オーバーキルというのも考えものである。ゆえになのはが取れる方策としては、竜たちを乗り越え、闇の書に近距離で砲撃を喰らわせることである。
しかし、それは実行困難と言わざるを得なかった。騎士たちの力を借りたとしても、竜たちの密度は高いものであるし、どういう原理なのか闇の書はほぼ無限と言わざるを得ないほどに竜たちを呼び出せるのだ。竜という最高位の壁を持つ闇の書はただでさえ厄介というのに、彼女自身も動くことができるのだ。
しかも、動きの基本としては逃げに近い動きをする。こちらを積極的に排除するわけでもなくただただ時間が過ぎるのを待っているようにも考えられる。
普通に考えれば、我武者羅に攻めることが無駄だとわかるだろう。だが、それでもなのはは諦めなかった。諦められなかった。
なぜなら、ここで諦めるということは、翔太を諦めるということと同義だからだ。それは、なのはにとってはありえないことだった。
なのはが心の底から望んだたった一人の友達。彼を諦めるということはありえない。諦めてしまえば、その瞬間、なのはは彼の友達である資格を失うような気がしたからだ。そうならば、またなのははまた一人だ。
あの孤独で、暗く、静かな時間。なのはが思い出したくもない時間だ。また、そんな状態に戻る
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