A's編
第三十二話 裏 中 (フェイト)
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―ねえ、フェイト。あなたはどこにいるの?」
――――私はどこにいる?
それはフェイトが一番教えてほしかった。
幼いころから母親に笑顔を見せてほしくて、魔法の勉強も必死にやった。母親からの一言が欲しくてフェイトはそれだけに注力してきたのだ。今までのフェイトは、短いながらも母親に人生をささげていたといっても過言ではない。ならば、こうして報われることがない、母親から受け入れてもらうこと、笑ってもらえることが絶対にない、と現実を突き付けられ、それ以外を知らないフェイトはどうしたらいいのだろうか。
――――ワタシハ、ドコニイルノ?
「そう、どこにもなかったんだよ。フェイトの居場所なんて。たった一つを除いてはね」
アリシアが、ようやく気付いたのか、というような呆れのため息をはいた後に、クモの糸のような一言を付け加える。
「………そんな場所があるの?」
フェイトには信じられなかった。
アリシア・テスタロッサでもなく、蔵元アリシアでもなく、フェイト・テスタロッサが認められる場所。フェイト・テスタロッサが、フェイト・テスタロッサとしていてもいい場所。そんな都合のいい居場所があるのだろうか。フェイトには到底信じられず、だが、己の存在意義を失ってしまったフェイトからしてみれば、それは最後の希望だった。
すがるような目でフェイトはアリシアを見る。私の居場所はどこ? と迷子になった子供の様に泣きそうになりながら、それでも、すがるべき、よるべき居場所を求めて。
かくして、答えはフェイトと瓜二つである少女からではなく、別のところから与えられた。アリシアとのアイコンタクトを交わした後に少年―――蔵元翔太は口を開く。
「そうだね、僕は君のお兄ちゃんだ。君が居場所を―――誰かから認められて、フェイトちゃんとしての居場所を望むのであれば、君が望み続ける限り、僕の妹は君―――フェイトちゃんだよ」
「わたし………が?」
その言葉を、今すぐすべてを放り出してすがりつきたいその言葉だった。今までどれだけ頑張っても与えられなかった居場所、渇望しても与えられなかった居場所。それをポンと軽く与えられたとしても彼女が感じるのは戸惑いだけだった。
「そうだね。フェイト・テスタロッサさん。君だよ。君だけの場所だよ」
そんな彼女に対して、確証を与えるように少年は重ねて少女の居場所を柔らかい、暖かい笑顔ともに告げる。
―――嗚呼、と少女は感嘆する。渇望し、与えられず、傷つけられ、絶望に沈んだ彼女にとって彼は、彼の隣という居場所は眩しすぎた。同時に彼女が望む居場所だった。
信じられない、信じたい。そんな二律背反の想いがフェイトの中に充満する。信じるべきなのか、信じるべきではないのか。心の中
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