A's編
第三十二話 裏 中 (フェイト)
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り上げて嘲笑いながら言葉を続ける。
「フェイトが夢でみているわけないでしょう? だったら、この場所はこんな風にはなっていないでしょう?」
アリシアの一言が次々にフェイトが隠したかった心を暴いていく。それは、闇の衣でくるめた目を背けたい真実を少しずつ暴いていくような感覚。
やめろ、やめろ、やめろ、とフェイトは心の中で叫ぶが、声には出せない。アリシアの言葉がフェイトの心を抉っていくが、それを止めるすべてをフェイトは持っていなかった。
そして、アリシアは嘲笑うような笑みを張り付けたまま、ついにフェイトに対して決定的な一言を口に出す。
「ねぇ、フェイト。あなた、本当は理解しているんでしょう?」
それは確認だ。事実の突きつけだ。ぎゅっと瞑った瞼を無理やり開かせ、事実の目の前に頭を持ってきて、押し付けるような言葉だった。
「もう、母さんがフェイトを認めてくれることなんてなくて、あなたは完全に捨てられたんだって」
「………ち、違う………そ、そんなことない」
見せつけられたくない、厳重に衣で覆っていた最後まで見たくないフェイトにとって恐怖すべき事実を突きつけられて、フェイトは恐怖で全身を震わせながら必死に否定した。
当たり前だ。それを認めてしまっては本当にフェイトは生きる意味がなくなる。今までの短い10年という時間ではあるが、フェイトは母親のために生きてきたのだ。それが、本当に無駄になってしまって、今後も報われることがないのだと理解してしまえば、それは本当にフェイトの居場所が、望んでいた場所の―――存在意義の消滅を意味する。
今もこうして、アリシアが表に出て、フェイトが奥底でひきこもっていられるのも、その事実を認めず、『いつか』『もしかしたら』という希望を持っているからに他ならない。それを完全に認めてしまったら、その希望さえも意味をなくてしまうではないか。
だから、プレシアがフェイトを見ることは絶対にないとしても、それを受け入れるわけにはいかなかった。たとえ、わずかでも、『もしかしたら』と思っていたとしても、だ。
だから、フェイトは必死に否定する。自分を守るために。自分の居場所となるべき場所はいまだに存在するのだと、自分を誤魔化すために。
しかし、そんなフェイトの思考の逃げ道をアリシアは次々とふさいでいく。
「そんなことあるでしょう? だって、気付いていないなら、理解していないなら翔子母さんをプレシア母さんと間違ったりしないもの」
「それに。仮に私が認められたとしても、それはあなたが認められたわけじゃないよ。フェイトが作り出したアリシアが認められただけ」
そして、決定的な一言。フェイトが一番突きつけられたくない一言を口にしてしまった。
「なら――
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