A's編
第三十二話 裏 中 (フェイト)
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そう思わなければならない。今の彼女に次の一歩は踏み出せない。踏み出したその先にある一つの終焉を知ってしまったから。自分がいないほうが幸せになれることを知ってしまったから。
自分はゴミであり、贋物である。だから、手は取れない。とっても意味がない。だから、フェイトは何も考えることはなかった。
「フェイトちゃん、こんなところに蹲っていても、何も変わらないよ。一緒に外の世界にいかないかい?」
柔らかい、本当ならフェイトの母親に浮かべてほしかったようなすべてを受け入れるような笑みを浮かべて蔵元翔太が手を伸ばす。だが、その笑みも、言葉もフェイトには届かない。彼女は諦めているから。認めているから。何より、翔太の言葉は意味がない。
『何も変わらない』―――そうだ、何も変わらない。そこが翔太の思い違いだ。フェイトは何かを変えることを求めていないのだから。フェイトが求めているのは昔から変わらずただ一つだけ―――母さんから認められることだ。
「………そと? どうして? 母さんはもういない。母さんから認められなくちゃ、生きている意味なんてない。ゴミの私には………贋物の私には」
だから、フェイトから出てきた言葉は、拒絶だった。
「あ〜あ、もったいないな」
そんなフェイトをあざ笑うような声をわざとらしく上げるのは、フェイトと瓜二つの容姿を持った一人の少女―――アリシアだった。
フェイトは、彼女がそんな声を出す意味がわからなかった。彼女は幸せなはずだ。自分の代わりに外に出て、翔子という母親に出会い、翔太という兄を持ち、フェイトが望んだような家族絵を描いていると言える。そんな彼女がフェイトに対して翔太を援護するような声を出すことがフェイトには信じられなかった。
「………どうして、あなたが? あなたが外に行って。母さんに認められてよ。私は、それを夢で見てるから」
そう、それでいい。すべては夢幻。現状はフェイトの傷つき、ひび割れた心を慰撫する贋物だ。
うらやましいとは思う。そんな風にプレシアとなれたらとは思う。だが、それはフェイトが望むものとは違うのだ。だから、『夢』。望む、望まないと限らず、夢なのだ。フェイトが望むのは、今も昔も一つだけなのだから。
「夢で?」
そんなフェイトを見透かしたようにアリシアがくすり、と笑う。その笑みにフェイトは恐怖心を覚えた。
なぜそんな風に笑える? 彼女は自分が作った幻想であるはずだ。なのに、まるで自分で気付いてほしくない部分を見透かしたような笑みを浮かべる。フェイトが覚えたのは、見られたくないものを見られたことに怯えるような恐怖心だった。
そんなフェイトに気付いてか、気付かずか―――おそらくは前者だろう。アリシアはチェシャ猫のように唇の両端を釣
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