A's編
第三十二話 裏 中 (フェイト)
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「一緒に行ってくれるんだよね?」
怖がるように、改めて確認するように小さく問いかけるフェイト。もしも、拒絶されたらどうしよう? という小さな恐怖や不安もある。だが、そんな彼女の心の内を知ってか、その恐怖や不安を払拭するような笑みを浮かべて蔵元翔太は口を開く。
「もちろん、僕は君のお兄ちゃんだからね」
ああ、大丈夫だとフェイトは思った。彼の隣なら自分は自分でいられると、フェイト・テスタロッサは、フェイト・テスタロッサ足りえると確信することができた。だから、フェイトはフェイト・テスタロッサを始まるために、そのための最初の障害となるこの場所から脱出するために魔力を高める。
「行きますっ!」
彼女は飛翔する。ここから、自らを閉じ込めていた檻から抜け出すために。その向こうに広がる光が広がる世界に飛び立つために。
自らが持つ魔法で、フェイトがアリシアだと認められなかった最大の原因をもって、アリシアである呪縛から抜け出すようにフェイトはそれを使って、黒い檻から飛び出す。いつの間にか空いていた小さな罅はフェイトの魔法で大きく広がっていた。あそこから脱出すれば、おそらくはこの空間から抜け出せるだろう。
そして、それは同時に彼女―――アリシアとの別れを意味していた。悲しいと言えば、悲しい。だが、本来はありえなかった邂逅だ。この空間の寿命が短いことも理解している。だが、だが、それでもありえなかった邂逅を少しでも長くするために脱出する直前に今もあの空間にとどまっている自分と瓜二つの存在をその視界に収めた。
彼女は自分に気付くと小さく手を振って笑っていた。まるでそこには別れがないように。気にするな、と言わんばかりに。そして、お互いに目があった直後に、フェイトに念話の様に声が響いた。
「ああ、フェイト、忘れないように持って行ってね」
念話を通して、それはフェイトとアリシアしかわからない絆ともいうべきライン。それを通して、フェイトへ何かが流れてくる。それは決して不快なものではなく、温かく心安らかなものだ。
「わたしでもなく、フェイトでもない蔵元アリシアが短い間に感じていた大好きという感情だよ。例え、あなたの虚像であってもあなたであることには変わりないんだから、持っていきなさいよ」
「―――ありがとう」
ああ、確かにそれは捨てられない。フェイトでなくても、フェイトだったのだ。虚像と言えども感じていたのは自分なのだ。ならば、翔太の妹になろうというのであれば、そこを自分の居場所なのだと、自分の存在意義はそれだというのならば、きっと兄が大好きだという先輩の感情は邪魔にはならないから。だから、フェイトは礼を言う。
それにアリシアが満足そうにうなずいたのを見て、フェイトは今度こそ、アリシアから視線
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