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A's編
第三十二話 裏 中 (フェイト)
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ようとしたフェイトだったが、本能的にとでも言おうか、彼女が、彼女を守るために防衛本能が働いた。精神的なものであるため、本能的な、と形容するのもおかしい話かもしれないが、自然とフェイトは自分が生きていくためにその身を防御した。

 つまり―――存在意義の再構築である。フェイトはすべてを否定された。己の意味を否定された。それは、フェイトの存在理由である母親が求めるフェイトではなかったからだ。ならば、ならば、話は実に簡単である。

 ―――母親が求める自分を作る。

 ああ、違う、違うのだ、と彼女は否定する。嫌われたのは本当の私ではないのだ、と。

 フェイトは、贋物と呼ばれた自分を退避させ、母親が求めた理想のフェイトを無意識のうちに構築する。

 普通ならば、望んだから、防衛本能が働いたからと言ってそう簡単にできることではないだろう。だが、フェイトには幸いにもと言うべきか、あるいは、不幸にもというべきか、その下地が十分にできていたのだ。

 それは、皮肉にも彼女の母親が行った記憶の転写が原因だった。クローンニングされた身体に記憶を転写する。文字にすれば簡単だが、行ったことを考えれば、わずかでも実現できたことは魔法というファクターが存在したとしても奇跡に近い。天才的ともいえる頭脳と狂気ともいうべき執念がなした業だったのだろう。

 しかし、それはあくまでも記憶の転写だ。いわば、他人の人生を映画として見せられたに近い。そうだとしても、影響が全くないわけではない。そもそも、その記憶の転写は彼女の存在意義である母親が求めたフェイト―――アリシアの記憶なのだ。ならば、フェイトが彼女を再構築する際に、その記憶が使わない手はない。

 フェイトがフェイトの居場所を求めるために作られた存在―――それが、蔵元アリシアという人格だった。

 その彼女が受けいれられる様をフェイトは、じっと膝を抱えて生気のない目で見ていたそこは、小さな小さな部屋。フェイトがフェイトを守るために逃げ出したフェイトという存在の心の隅だ。そこからフェイトは小さなテレビを見るような感覚で、彼女が本能で作成したアリシアが蔵元家に受け入れられる様を見ていた。

 自分が理想としたものが、自分が追い求めていたものがそこにあった。偽りの名前とはいえ母から名前を呼んでもらい、笑いかけてもらい、抱きしめてもらえるというフェイトにとっては遠き理想がそこには存在していた。存在していたがゆえに思う。

 ――――ああ、自分はやっぱりいらなかったのか、と。

 贋物と呼ばれた自分が無意識のうちにとはいえ作り出した人格。彼女は、受け入れられた。そして、自分は捨てられた。違いは明白だ。そこには天と地ほどの格差がある。だが、それでもよかった。なぜなら、あれはフェイトが求めた理想で、フェイ
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