戦場に乗せる対価は等しからず
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の対応を強いられている。
火は使われる事が無かった。あれほど盛大に使っていたのだから、もう燃やせる油も無いのだろう。麗羽達はそう予測を立てた。
機を見て敏なり、此処が正念場であると意識を置いた袁紹軍の攻勢は凄まじく、幾刻後には遂に一つの壁が破られた。
雪崩れ込む人の群れに、曹操軍の兵士達は脱兎のごとく逃げ始める。東西南北の城門を全て塞いでいるというからには、逃げる場所など何処にもない……と、思われた。
まず、袁紹軍は入ってから唖然とする。官渡内部に余りに異質なモノがあった為に。
「な、なんだこれ?」
猪々子が素っ頓狂な声を上げる。はたはたと脚を止める兵士達の頭にも疑問ばかりが浮かんでいた。
土の壁が幾多、そびえているのだ。人の身長よりも大きな壁と、入って来いと言わんばかりの入り口。
あからさまな誘い。これに突っ込むバカは居ない。後で調べてみようと切って捨て、どうにか逃げ惑う敵を追おうとするも……
「へへっ、こっちだよいっちー!」
連合の檄文を届けに行った際に真名を交換した少女が、ひらひらと手を振り、あっかんべーと舌を出して誘っていた。
「きょっちー! 官渡に居たのか!?」
「ボクが守ってるんだもん。当然じゃん! 戦うんならこっちにおいでよ!」
兵達からは苦笑が漏れる。
本当にあからさまな、子供のような誘いであるのだ。
土の壁はそこそこ長い距離に渡って広がり、四方を囲まれて上るか打ち壊さなければ入り込めない。しかし土の上には兵が居座り、矢を構えてもいる。
見れば内部の建物の上にも弓兵が構えており、対応するのに時間が掛かる。
秋斗と真桜が作り上げた官渡は攻城戦にして攻城戦に非ず。例え内部に踏み込んだとしても軍としての動きを白紙にしてしまう『街の中での戦闘』を想定されていた。
見つけた敵を殺すだけ。しかし区切られた空間では兵個人の練度が高い方が勝るのは必然で、野戦用の大きな部隊指揮などなんの意味も持たない。数の差で体力的な問題はあるモノの、兵達だけの純粋な力量勝負に持ち込まれたのだ。
狭い通路では二人、ないしは三人での連携。質によって黄巾を乗り越えて、尚且つ厳しい訓練を積んできた曹操軍の兵士達にとっては慣れた戦い。
極め付けは……漸く広い場所に出たと思っても、備えられている小型投槍器による面制圧が待っていた。秋蘭の弓部隊も列を為して配置され、纏まって動こうモノならいい的になる。
木板を斜めに立てかけて、覗き穴から放たれる矢は、自分達は射られる事が無い安心感から絶対の精度を誇り。
はたまた、纏まって突撃して来ようとも建物の内に配置された槍兵が飛び出して意表を突いたりと、その戦い方は多種多様。
戦ではなんでも利用するモノだ。古今東西、世界各国であった戦争は野戦だ
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