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乱世の確率事象改変
戦場に乗せる対価は等しからず
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せてやるんで、俺らだけで十分です。あなた方は強いが、大量の矢でも来たらどうすんです? 万が一があったら、俺らはどうすりゃいいんですか?」
「それは……」

 流琉が慌てて反論しようとするも、口を噤んだ。兵士達が浮かべている笑みに圧されて。

「ど、どういうことさ」
「この戦場の後始末は俺らに任せて次の仕事に行ってくれって事です」
「そんなの――――」
「将になるなら!」

 まだ言い返そうとした季衣を、大きな声で遮った。
 切り捨てられる命として呑み込めと、彼らはそう言っているのだ。

「一定の成果を得るのに部下の命を躊躇っちゃいけねぇ。何より……お二人が目指してるあの方たちは……俺らみたいなのに任せてくれますぜ?」

 春蘭と秋蘭ならば、部隊のモノに背中を預ける事を躊躇わない。非情な命令を下す事も躊躇わない。それが戦における兵の正統な扱いだ。
 だからこそ、此れから乱世を越えて行くにあたって華琳だけを守る彼女達に足りない部分は、兵士に守られていると自覚すること。自分達の命を、彼らの命よりも重いと見る事であった。
 言い方は悪いが、彼らからすれば季衣や流琉は重荷。自分達で守れるはずの主を、この小さな少女に守らせてどうする、と。
 自分達だけで守り切れなければ親衛隊には足りえない。此れは華琳が窮地に陥った場合の、季衣と流琉を華琳に見立てての実践演習とも言えた。

 敬愛する二人の事を話しに出されては何も言えない。二人に追い縋りたいからこそ、その論理はよく分かった。分かってしまった。
 戦場に立ち、乱世を駆けると決めた以上は、彼女達はこれからもこんな選択が増えて行く。だから、今この時に、自分が一人でも多くを生かしたいという願いを飼い慣らさなければならない。

「季衣……」
「うん、流琉」

 此れはただの一戦場。ただの一戦闘。残酷に、理不尽に、命が咲き誇る乱世の常。
 彼らは命を賭ける。彼女達は命を賭けてはならない。誰もが死ぬ可能性があるとしても、彼女達は生かされなければならない。
 ぎゅう、と眉根を寄せた二人は……せめて、と笑顔を見せた。

「先に行って待ってるから」
「先に行って待ってますよ」

 振り返らずに、彼女達は駆けて行く。残ると決められた者以外も、その背を守る為に駆けて行く。
 ふ……と誇らしく笑ったのは全員。此処からが彼らの仕事で、彼らの選んだ生き様だった。

「ははっ、掛かって来い、袁紹軍! お前ら死ぬ覚悟は出来てるかぁ!? お前らは何を守りたい!?」
「ただ戦うだけなんざ真っ平だ! 誇りはあるか? 意地はあるか? 願いはあるかよ!」
「聞けよクズ共、恐怖を刻め! 我ら曹操親衛隊の精兵なり! 上げろ、俺達だけの指標を!」

 喉も張り裂けんばかりに声を上げ、彼らの唱
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