戦場に乗せる対価は等しからず
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人が、阿吽の呼吸と言うに相応しい連携を繰り広げれば、一介の兵士達では近付く事さえ出来ない。
そして厄介なのはもう一つ。ただの兵士と侮って近づこうモノなら、その二人に合わせるように動く曹操軍の兵士達によって惨殺される。
今、彼女達二人を守っているのは他の部隊とはかけ離れた経験を持つモノなのだ。
彼らは曹操直属の親衛隊。この乱世の初めから生き抜いてきた歴戦の古強者。そして華琳自らがあの化け物部隊と同じに仕上げた、曹操軍で最高水準を誇る英雄たち。
功に逸る心も、彼らの美しい舞の如き連携連撃で崩される。
刷り込まれた恐怖が、袁紹軍の兵士達に甦った。たかだか兵士がこれほどまでに強い。少しばかり武に秀でていようとも、多種多様な動きを即時対応してみせる彼らには通用しない。
“アレを追い詰めては、ダメなのだ”
赤い華が、記憶にちらついて離れない。腕に巻かれた黒い布が、命をゴミクズのように投げ捨てる黒の部隊を思い出させる。よく見れば、彼らは笑っているのだ……アレと同じように。
刻まれた恐怖は情報によって助長され、瞬く間に袁紹軍の全てにためらいを生ませた。
そうして、誰も近づけなかった……いや、近づかずに殺そうと考えた。
其処まで、誰かの読み筋であるとは知らずに。
「おー……朔にゃんの言った通りになったね」
「凄い……これなら大丈夫かも」
人の心を読むに長ける狼は、黒の為の戦場をただ読み解き敷くだけでいい。故に、この状況は必然として作られた。
楽しげな声を上げる二人は疲れも不安も感じさせず、周りを確認して子供のように喜ぶ。
戦場の匂いが支配するこの場では異質に過ぎるが……親衛隊にとっては通常のこと。彼女達の無邪気さを見れる事で、彼が打ち建てさせた証の証明となった。
「では、先にお逃げください」
親衛隊で一番のモノが言うと、季衣は不思議そうに首を傾げた。
「ん? 何言ってるのさ。ボク達が殿で皆が逃げるんだよ?」
「そうですよ。しっかり守りの仕事を遣り切りますから」
彼女達が殿を務める方が確実に多くを助けられる。当然だ、と誰もが思う。彼女達が守る側で、彼らは守られるべき。
けれども、彼らにとって……それが一番認められないという事を季衣達は知らない。
「はは……」
ああなんだ、と彼らは思う。所詮この少女達にとって、自分達は脆弱な守るべきモノでしかないのだ、と。
――認められねぇ。認めて、たまるもんかよ。
たった二人で戦に向かう黒が、彼らに残した仕事がある。
名も語られぬ彼らが、より確実にこの二人を救うためにと授けた……黒の本質。
心が渇く。まだ認められていない。ならば、自分達は守る側なのだと、命を張って証明するしかない。
「敵に大目玉食らわ
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