戦場に乗せる対価は等しからず
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とは、風と稟は違う。
冷静に自分の心を読み解ける風は、例え稟が死んでも自分が壊れてしまう事は無いと言い切れた。
「そうか……」
何を思ってか、春蘭はまた酒をグイと呷った。トクトクと次を注いで、風の杯にも継ぎ足す。
「大切なモノの価値も、割り切り方も、想いの寄せ方も……人それぞれだ。だがあいつの生き方を思うとな……何かはけ口を用意してやらなければ死んでしまうと思う」
「復讐をした後の虚しさ、というのもあるのではー? どちらにしても危険だと思うのです」
「それでも割り切って一歩踏み出せる方に賭けるべきだろう?」
兵士の犠牲よりも、紅揚羽の未来を。それが春蘭の選んだ答えで、華琳の為になる事。
郭図がどうなるかなど二人共が容易に予想出来る。
怨嗟のはけ口としてありとあらゆる拷問を受けるだろう。ソレは誇りなど欠片も無い行いで、華琳の軍としてはやるべきでは無い事だ。
「張コウちゃんは拷問の専門家らしいですけど?」
「ああ、分かっているとも。吐き気がする。そんな気の紛らわせ方など認められない。しかしやはり……なぁ」
人の命を猛獣に与える餌のように扱うのだ。気持ちのいいモノでは無い。生来真っ直ぐな春蘭にすれば有り得ない事態だ。
――春蘭ちゃんはなんだかんだで皆の事考えてるんですよねー。さすがは秋蘭ちゃんのお姉さんといったところでしょうか。
風はそう思う。皆の繋ぎ役を買って出るのは秋蘭がほとんどだが、それに隠れて春蘭も皆に気を回して居たりする。空回りしたり気付いて貰えない事が多いのだが。
バカ正直故の性分。そこがまた、華琳が寵愛を注ぐ部分でもあった。
言いよどむ春蘭の前、風はコトリと杯を置いてぼんやりと見つめた。
「……季衣ちゃんと流琉ちゃん、大丈夫でしょうか」
言い分は分かった。春蘭はきっとその意見を曲げない。ならこれ以上話してもしょうがない。せめて、と風は話を変える。
「む……秋蘭が居るからあちらは大丈夫だろう。徐晃も手を打っているし」
「お兄さんが? 真桜ちゃんと作ったモノのことでしょうか?」
「いいや、違う」
急に出た名前にキョトンと目を丸めて。そんな話は聞いていない。また軍師達に何も言わずに何かをしたのかと少し驚いた。
「あいつ本来の遣り方だ」
「お兄さん本来の……?」
はっきりとしない物言いに眉を寄せる。彼がする事はいつも掴み処が無く、風を以ってしても分からない。
「黒麒麟と唯一共通している部分……アレは兵士達を狂わせる。それが自分の受け持つ部隊以外であっても」
ほんの些細な、憐みを含んだ瞳の色で告げた。
前の彼と今の彼、共通している部分はあれどもやはり違う。春蘭はそう感じていた。
ただし同じところが一つ。男にして
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