第139話 孫権と甘寧
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長沙郡太守の娘とはね。でも長沙郡太守の娘とごろつき女が何で一緒なんだい? ごろつき女は人さらい。そうは見えないね。娘が主人でごろつき女が従者にしか見えないんだけど」
呂岱が「長沙郡太守」と口にする時の表情は機嫌が悪そうだった。
「ああ、そうだ。甘興覇は流れに流れて孫家に士官したのだ」
愛紗は正宗の話を黙って聞いていた。
「孫文台は嫌いだけど、あの娘には罪はないしね。それで正礼が血相を変える理由は何だい? 孫文台に命でも狙われているのかい」
「そうなのですか!」
愛紗は怖い表情で正宗を見つめた。
「愛紗落ち着け。私は孫文台に命は狙われていない」
正宗は心の中で「史実の世界では将来孫文台の子供である孫伯符に叩きのめされて悲惨な最期を迎えるけどな」と独白した。
「孫仲謀がこの時期に南陽郡にいるのが気にかかるのだ」
「真逆っ! 美羽嬢ちゃんを暗殺しようとしているのかね。最近も暗殺事件が起こったばかりじゃないか」
呂岱は掌を組み指を鳴らしながら殺気に満ちた瞳を爛々とさせていた。
「定公、落ち着け」
正宗は慌てて呂岱を制止する。
「美羽嬢ちゃんを暗殺しようなんて奴は殺してしまおう」
呂岱は怖い表情で正宗に語りかけた。
「孫仲謀が美羽を暗殺すると決まった訳ではない」
美羽暗殺の真の黒幕を知る正宗は全面的に否定した。
「正礼は美羽嬢ちゃんの暗殺の黒幕を知っているのかい?」
「知っているが話せない。美羽が望んでいるんだ」
呂岱は沈黙して瞑目するとため息をついた。
「分かったよ。でも、一つ教えてくれるかい。今回の事件に長沙郡太守は関わっているのかい?」
呂岱はため息をつきながら正宗に聞いてきた。
「関わっていないと断言する。だが、今後どうなるかはわからない」
正宗は可能性は低いが蔡瑁と孫堅が共闘しないとも限らないと考えているのだろう。
「煮え切らないね」
呂岱は正宗の言葉に不服そうな表情を浮かべた。
「美羽暗殺の黒幕が孫文台に接触したとしても、孫仲謀がここにいるのは時期的に早すぎるんだ。多分、別の用事で南陽郡にいると見ていい」
「何か釈だけど、全てを知る正礼の目では孫仲謀は美羽嬢ちゃん暗殺に関わっていないということだね」
「棘のある言い方だな。だが、定公の言う通り概ねそうだ」
「どうします?」
正宗と呂岱が話し終わると愛紗が口を開いた。
「このまま帰ってもらえばいい。あの様子だ。お忍びで南陽郡に来た可能性が高い。正面突破がお家芸の孫文台が娘にせせこましいことをさせることはないだろうさ」
「孫文台のこと随分詳しいんだね」
「詳しいという程ではないさ。私は猛獣には注意するたちでな。荊州に
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