第139話 孫権と甘寧
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格だよ」
呂岱は唇を突き出しながら二人分のアヒルの丸焼きを皿に乗せていった。
「愛紗、飯を装ってくれるかい」
呂岱は料理の盛られた皿を確認すると愛紗に言った。
「はい、女将さん」
愛紗はいそいそと茶碗に飯を盛っていく。
「愛紗、料理の品数からしてお前だけでは無理だろ。私が手伝おう」
「正宗はここに残っていな。私が配膳をするよ」
正宗が愛紗を手伝おうとすると呂岱が言った。
「愛紗の顔を立ててあげなくちゃ、私が悪人みたいだからね」
呂岱は手際良く盆に野菜炒めと飯を盛った茶碗を乗せながら言った。
「十分に悪人だと思うがな」
正宗は笑いながら言った。
「うるいさいね。酒の件は忘れないでおくれよ」
呂岱は愚痴を言いながら調理場を出て行った。正宗は愛紗と呂岱の後ろ姿を見をくると、店内が見えるギリギリの場所で客の様子を伺った。
客は陽光が差し込む窓際の席に腰掛けていたため、調理場からでも姿を十分に確認できた。客の姿を確認した正宗は表情が固まった。
「何故、ここにいる」
正宗は誰にも聞き取ることができない小さい声で独白した。正宗と客は直接の面識はないが、正宗がよく知る人物で孫権と甘寧だった。
正宗は二人を凝視していた。すると甘寧がこちらに一瞬視線を向けた気がした。それを察知した正宗は勢いよく屈み込み、その状態で調理場の奥に移動して行こうとした。
「何しているんだい?」
呂岱は屈み込み調理場の奥に移動する正宗を訝しんで見ていた。
「静かにしろ。定公、こっちにこい」
正宗は呂岱から呼びかけられると振り返りざまに自分の口元に人差し指を立て消え入りそうな声で言った。呂岱は正宗に態度に訝しみながらも正宗に近づき屈み込み正宗と目線を合わせた。正宗は同様に愛紗にも呂岱と同じことを言った。
三人が調理場で屈み込んで顔を突き合わせている姿は異様に映る。
「正礼、血相を変えてどうしたんだい」
話を切り出したのは呂岱だった。
「お知り合いでしょうか?」
愛紗が真剣な表情で聞いてきた。
「いや、知り合いではない。だが、あの二人知っている」
正宗は真剣な表情で言った。彼の表情が余りに真剣だったので呂岱が武人の表情に変わった。彼女は少し勘違いしているかもしれない。
「お尋ね者かい?」
呂岱は真剣な表情で聞いてきた。
「いや、違う」
「じゃあ、誰なんだい」
呂岱は正宗の言葉に呆れたような表情を返した。
「淡紅色の髪の女は孫文台の次女ーー孫仲謀。藍色の髪の女は益州巴郡出身のごろつき上がりの甘興覇」
愛紗は正宗の言葉に驚き、呂岱は微妙に怒りを覚えた表情に変わっていた。
「
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