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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
第139話 孫権と甘寧
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 正宗は呂岱との約束を守り、呂岱が切り盛りする『海陵酒家』で一ヶ月間働くことになった。現在、正宗は店――海陵酒家の裏手にある中庭で薪割りをしていた。この店で正宗が働き始めて二週間が経過していた。

「正宗様、お疲れ様です」

 愛紗が薪割りをしている正宗に声をかけてきた。正宗は声のした方を向き愛紗を視線に捉えた。愛紗は盆に湯呑を載せ正宗に近づいてくると、彼に湯呑を手渡した。

「愛紗、ありがとう」
「いえ、正宗様に白湯など出してしまい申し訳ございません」
「気にしていない。私は今でこそ王であるが、我が一族は宗室とはいえ一般の士大夫と同じく下から立身してきた。だから市井の民の生活は重々承知しているつもりだ。昔は白湯も普通に飲んでいた」

 正宗は首にかけていた手拭いで額の汗を拭きながら愛紗に言った。

「そう言っていただけるとありがたいです」

 愛紗は恐縮したように答えた。
 正宗は大きい丸太を椅子代わりに腰掛け白湯を飲む。

「愛紗、お前も立っていないで座ってはどうだ」

 正宗は自分が座っている同じ位の大きさの丸太に視線を移し、愛紗に座るように勧めた。愛紗は正宗に勧められるまま丸太に腰を掛けた。

「愛紗、何故に定公はここに店を構えているのだ?」

 正宗は徐に愛紗に尋ねた。

「わかりません」

 愛紗は困ったような表情を正宗に返した。彼女は嘘をついている様子はない。

「日が暮れると街で働く大勢の人足が夕食を食いに来るが儲けはあまりないように思う。定公の料理の腕であれば中央街でも繁盛すると思うのだが。わざわざ荒くれ者の人足を相手にすることもないであろう」

 正宗は愛紗を見て言った。正宗の発言には理由があった。正宗が店で働き始めて、この店の客層を彼は理解した。店は開店から昼間は閑散だが、夜になると街で日雇いの労働に従事する人足が大勢腹を満たしにやってきた。彼らは南陽郡の外から出稼ぎに来た者達が多かった。彼らの多くは気性が荒く、中には侠や元犯罪者ではないかと思われるような雰囲気を漂わせる者達も目にする機会があったのだ。
 客層が客層だけに店を訪れる客は問題を起こすことが多々あった。女将である呂岱の対応は単純で「店内で粗相をする客は客でない」と情け容赦なくボロ雑巾のようにされた挙句、身包み剥がされ店外に叩き出されていたのだった。呂岱の腕っ節の強さもあり、店に来る客からは『女将さん』ではななく『(あね)さん』と敬称され畏れられながらも慕われていた。呂岱本人は『(あね)さん』と呼ばれることに拒否感を感じているようだったが、客に言っても一向に止めないため諦めているようだった。

「正宗様が仰る理由はよくわかります。でも、私みたいな素性の分からない状態の人物でも受け入れてくれた人です。良い方
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