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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十八話 手向けの酒
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軽く笑った。
「手向けの酒だ」
驚いてオフレッサー、リューネブルク中将を見た。二人も驚いている。

「……キルヒアイス提督のためか、彼を殺す策を立てた事を後悔しているのか?」
エーリッヒが困ったような笑みを浮かべた。
「彼だけのためじゃないさ。それに後悔はしていない。ローエングラム侯と戦う以上あの二人は必ず殺す、どちらか一方だけという事は無いからね。あの二人がそれを望まない」
エーリッヒがまたグラスにワインを注いだ。あの二人? ローエングラム侯とキルヒアイス提督か。

「訂正、二人じゃなかった、三人だった」
「三人?」
どういう事だ、ローエングラム侯とキルヒアイス提督ではないのか。まさか……。
「ああ、グリューネワルト伯爵夫人を忘れていたよ。全員ヴァルハラに送ってやるさ。ヴァルハラでならあの三人は幸せになれるだろう。現世で幸せになろうとしたのが間違いだったんだ」

そう言うとエーリッヒはまたグラスのワインを一気に飲み干した。見ていられん、何処かで自分を痛めつけている。一瞬だが三人目はエーリッヒ自身の事を言っているのかと思った。オフレッサーもリューネブルク中将も痛ましそうに見ている。エーリッヒが本当に戦っているのは敵では無くローエングラム侯を殺したくないと思う自分自身の心なのだろう……。

「もうその辺にした方が良いだろう」
「そうですね、この辺にしましょう」
オフレッサーが止めるとエーリッヒは素直に従った。ホッとした。こんなエーリッヒは見たくない。リューネブルク中将もホッとした表情をしている。

「これまでは前哨戦、これからが本番だ。今まで以上に人が死ぬ。ま、人間なんて何時かは死ぬ。遅いか早いか、バラバラに殺すか纏めて殺すか、それだけの違いだな。酒を飲む機会には当分苦労せずに済みそうだ」
「……エーリッヒ」
オフレッサーか、リューネブルク中将か、ごくりと喉を鳴らす音が聞こえた。

「ワルキューレは大忙しだな。超過勤務手当が付けば良いが。そうでないと恨まれそうだ」
そう言うとエーリッヒはクスクスと笑いだした。徐々に笑い声が大きくなっていく。凍り付きそうな笑い声だった。









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