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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十八話 手向けの酒
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形跡は無い。
「それで、どうなった?」
「リッテンハイム侯から連絡が有った。キフォイザー星域の会戦は貴族連合軍の大勝利だ。敵の総司令官、ジークフリード・キルヒアイス上級大将は戦死。敵兵力の二分の一を無力化したとの事だ。ファーレンハイト提督の働きが大きかったと言っている」
エーリッヒが微かに頷いた。

「ジークフリード・キルヒアイスが死んだとなるとラインハルトはどうなるかな。自分の半身を失うわけだが狂うか、それとも冷徹になるか……。アンネローゼがいるからまだ拠り所は有るか……。しかしそれを失えば……、楽しくなりそうだな」
「エーリッヒ」
エーリッヒが訝しげな表情をしている。無意識の呟きか。

「二分の一を失ったか。となると残りは二万隻といったところだな……。ルッツ、ワーレン、それぞれ一万隻程度の兵力が残っているという計算になる。さて如何するかな、あの二人に辺境星域平定を続けさせるか、それとも諦めて本体に戻すか……。現状では戻すのが妥当だな。あの二人が戻って来るとなれば厄介だな」
エーリッヒが顔を顰めた。

「確かに厄介だな」
使い勝手の良い二人が戻って来る。一個艦隊には及ばないが一万隻を保有するとなれば侮る事は出来ない。辺境星域の平定が失敗した、キルヒアイス総司令官を敗死させたからといって喜んでもいられないか。何より腹心を殺されたローエングラム侯がどうなるか、予断を許さない。

「それで、リッテンハイム侯は?」
「ガイエスブルク要塞に帰還する準備をしている」
ドアが勢いよく叩かれて人が入って来た。オフレッサー上級大将とリューネブルク中将だ。二人とも大股で近づいてきた、興奮している。

「ヴァレンシュタイン、聞いたか?」
「キフォイザーでリッテンハイム侯が勝った事、キルヒアイス上級大将が戦死した事なら今聞きました」
二人も席に座った。
「これで正規軍による辺境星域の平定は失敗になりましたな」
リューネブルク中将が幾分興奮した様に言うとオフレッサーが大きく頷いた。

「アントン、ブラウンシュバイク公は?」
「予定通りだ、放送の準備をしている」
オフレッサーとリューネブルクが訝しげな表情をした。
「ブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯が共同でキフォイザー星域での勝利と正規軍による辺境星域の平定が失敗した事を宣言します」

「なるほどブラウンシュバイク、リッテンハイム連合が一枚岩であると宣言するわけか」
「辺境星域も積極的にこちらに付きますな」
オフレッサー、リューネブルク中将の二人が頷くとエーリッヒが微かに笑みを浮かべた。
「狙いはオーディンです。オーディンの貴族達は必ず反応する筈です。リヒテンラーデ公、ローエングラム侯に反旗を翻す人間が出る」
“なるほど”と二人が頷くとまたエーリッヒが笑った。

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