第百九十二話 大返しその十三
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「大きな城を築きたい」
「そうされますか」
「姫路と共に」
「そうじゃ、あと大坂にも築きたいが」
ここで言う信長だった。
「石山のところじゃな」
「あの場にですか」
「丁渡あの場から本願寺が何から何まで持って去る」
彼等にとって好都合なことにだ、本願寺は石山を立ち去る途中だった。このことは今現在進行中である。
「だからな」
「大坂にもですか」
「城を築き」
「そしてこの場にもですか」
「城を築きますか」
「そうしようぞ」
こう言うのだった。
「そうして東海の抑えとする」
「岐阜と並び」
「そうされますか」
「そうじゃ、天下を治める要害の一つとする」
その城をというのだ。
「そういうことじゃ」
「左様ですか、それでは」
「東国の戦が収まったなら」
「この尾張にもですか」
「城を築きますか」
「そうする、それではな」
ここまで話してだった、信長は家臣達に言った。
「まずは三河に行くぞ」
「殿、それでなのですが」
ここで言ったのは羽柴だった。彼と秀長そして山中も信長達と合流してそうしてなのだった。
「後から来ている兵糧や武具ですが」
「それじゃな」
「馬を急がせていますので」
織田家は馬の数も多い、騎馬隊だけでなくそうしたものを運ぶのにも充分過ぎる程馬を用意してそうして使っているのだ。
それでだ、その運ばせている兵糧や武具もというのだ。
「ですから」
「三河に入るとか」
「合流出来ます」
「それはいいことじゃ、ではな」
「はい、鉄砲も長槍も揃え」
「もう一つある」
ここでまた言う信長だった。
「兵達に伝えよ、三河に入ればな」
「その時にですか」
「木を切り丸太を用意せよ」
こう言うのだった。
「柵を作れる大きさのな」
「その大きさの丸太をですか」
「そうじゃ、用意してじゃ」
そうしてだというのだ。
「そのうえでな」
「丸太を持ってですか」
「そうして」
「そうじゃ、竹千代を助けに行くぞ」
こう言うのだった。
「今よりな」
「はい、では」
「これより」
家臣達も応える、そうしてだった。
織田家の軍勢は岐阜から尾張に向かうのだった、織田家と武田家の雌雄を決する時が遂に来ようとしていた。
第百九十二話 完
2014・8・3
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