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第一章
ムスタング
アメリカ陸軍航空隊には悩みがあった。
彼等はこの時イギリスから四発の重爆撃機B−17フライングフォートレスを使ってだ。ドイツ本土に戦略爆撃を行っていた。これはだ。
ドイツの力を凄まじい勢いで奪っていった。工業地帯や軍事基地の破壊だけでなくそこで働く者達がいる市街地まで攻撃したせいだ。
その為にドイツの継戦能力はなくなろうとしていた。しかしだ。
彼等はだ。あることに頭を悩ませ話し合っていた。
「損害が多いです」
「そうだな。多いな」
アメリカ陸軍航空隊の最高司令官でもある連合軍最高司令官アイゼンハワー元帥もだ。参謀達の報告にだ。苦い顔で応えた。今簡素な自室でだ。コーヒーを飲みながら自身の前に立つ参謀達の話を聞いていた。
普段は百万ドルの微笑と言われる笑顔もなくだ。参謀達に言うのだった。
「三百六十機を出撃させてか」
「はい、六十機の損害です」
「六分の一です」
「多過ぎる」
軍の損害としてはあまりにも酷かった。
それでだ。アイゼンハワーは言うのだった。
「このまま損害を出してはだ」
「問題ですね」
「志願者も減ります」
「また市民の感情も反戦に傾きます」
「戦略爆撃そのものに疑問の声も出ます」
政治的な言葉も出て来ていた。
とにかくだ。損害が多過ぎるのだ。それでだ。
彼等は懸念をだ。次々に言うのだった。
「B−17は確かに重装備です」
「空の要塞の名は伊達ではありません」
「それに自動消火装置もあります」
「中々撃墜されない筈です」
「しかし撃墜される」
アイゼンハワーはこの現実を語った。
「それは何故かというとだな」
「ドイツの守りは堅固です」
「高射砲もさることながら」
戦車の砲にもなっている八十八ミリ砲だ。その威力はかなりのものだ。
だがそれだけではなかった。ドイツにあるのは。
「戦闘機が一番厄介です」
「機体の性能もパイロットの腕もです」
「バトルオブブリテンの頃から健在です」
「その彼等が必死に迎撃してきます」
「ですから」
「敵もさるものだな」
アイゼンハワーはこの言葉はこれだけに留めた。ドイツ系である彼は今はあえて感情を見せなかったのだ。余計な詮索をされない為にだ。
そうしてからだ。彼はこのことを言った。
「護衛戦闘機はどうなのだ」
「P−47ですね」
「サンダーボルトですか」
「あれは強い」
頑丈さで知られている。護衛戦闘機としては充分な強さがある。
当然ドイツの戦闘機にも対抗できる。しかもその数はドイツ機を圧倒している。その戦闘機がいるのなら問題はないのではないかというのだ。
しかしだった。参謀達はこう報告したのだった。
「フランス
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