第三十五話 月光の下でその四
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「こうした技も身に着けているのよ」
「そうか」
「それにね」
「それにか」
「あんたも切り札がまだあるわね」
「わかるな、それは」
「鮫だからね」
それ故にというのだ。
「それ位はわかるわ」
「そうか、しかしな」
「切り札だからね」
「そう簡単に見せるつもりはないんだよ」
「そういうことよね」
「まだだ」
その切り札を出す時は、というのだ。
「貴様もわかっている様だしな」
「ええ、そうよ」
菊も余裕の笑みを浮かべて返す。
「だから出すのを待っているわ」
「出したところを破るつもりだな」
「察しがいいわね」
「俺は確かに鮫だ」
怪人は己が何であるかも言った。
「しかし鮫であると共にだ」
「その頭は人間ね」
「鮫の力に人間の能力だ」
その二つを兼ね備えているというのだ、自身は。
「その鮫の頭でわかるのだ」
「そういうことね」
「誰が破られるとわかっている技を出すか」
例えだ、それが切り札でもだ。
「そうした状況でな」
「つまり破られない状況で、というのね」
「そうだ、その時に出す」
例え今でなくとも、というのだ。
「このことを言っておく」
「そう、やっぱり考えているわね」
「切り札は読まれている時には出さない」
「相手の隙を衝いて出す」
「そうしたものだと言っておく」
こう言ってだ、そしてだった。
怪人はその歯をナイフとして斬り投げつつ菊と戦い続けた。その両者の横では向日葵と鰐の怪人が工攻防を続けていた。
怪人は両手と尾を使い続けている、向日葵はそれを少林寺の技で防いでいる。怪人はその向日葵に問うた。
「俺は攻め貴様は守る」
「今の状況はね」
「思ったより防ぐな」
その守る向日葵は、というのだ。
「やるものだな」
「私だって修行してるしね」
「そうだな、しかしな」
「ええ、私の専門はあくまで弓矢よ」
それだというのだ。
「蹴りも使うけれどね」
「その弓矢が使えない状況でどうする」
「どうしてあんたを倒すかよね」
「その手はないな、ならばだ」
向日葵は切り札を使えない、それならばというのだ。
「俺の勝ちだ」
「そう思うのね」
「実際にそうだ」
「そうね、普通に考えればね」
「普通だというのか」
「弓矢といっても色々よ」
向日葵は楽しげに笑って怪人に告げた。
「そこはね」
「色々か」
「そう、色々だから」
こう言うのだった。
「やり方があるのよ」
「面白いな、ではそれはどうやる」
「その時になれば見せてあげるわ」
向日葵はその弓矢をすぐには見せなかった、微笑みそのうえで怪人に対してこう言ったのだった。今は。
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