第三十五話 月光の下でその三
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「接近戦も出来るのか」
「武器は弓だけれどね」
「それで何故接近戦が出来る」
「鍛えてるのよ」
こうだ、怪人の両手、ボクシングの要領で放たれるそれと尾の複合攻撃を少林寺拳法の動きで防ぎつつ答えた。
「こっちもね」
「その技でか」
「そう、弓は確かに接近戦は出来ないから」
他の武器と違いだ。
「だからね」
「その技を身に着けたか」
「少林寺拳法はいいわ」
その身に着けたものについても言うのだった。
「これはね」
「そうか、しかしだ」
「しかしっていうのね」
「御前はあくまで遠距離戦が得意だ」
怪人も見抜いていた、このことを。
「接近戦は不得意だな」
「そのことは否定出来ないわ」
「ならこのまま攻めればいい」
これが怪人の出した答えだった。
「俺はな」
「随分簡単に答え出したわね」
「さて、どうかしらね」
向日葵は笑ってだ、自信を見せる怪人に返した。
「それは」
「接近戦で俺に勝つつもりか」
「少なくとも負けるつもりはないわ」
「そうか、では見せてもらおう」
言いながらだった、怪人はまた尾の一撃を放ったがそれでもだ。左脚でソバットを出したそれに光を含めて弾き返した。
「この程度じゃないな」
「勿論よ」
「見たところそこそこはやるがな」
接近戦もというのだ。
「この程度では俺は倒せない」
「そうよね、接近戦ははじめたばかりだし」
その少林寺拳法をというのだ。
「だからね」
「俺には勝てないな」
「それでどうあんたに勝つか」
「見せてくれるんだな」
「そのアイディアはあるわ」
こうしたことを話しながらだった、向日葵は怪人と戦うのだった、しかしその横で菊は鮫の怪人と戦い続けていた。
ここでだ、鮫の怪人は接近戦の中でだった。
己の口に手を入れてそこから歯を出した、そしてその歯をナイフにしてそのうえで接近戦を戦っていた。その闘いの中で菊に言うのだった。
「鮫のことは知ってるよな」
「その歯はね」
「幾らでも出て来るんだよ」
「生え替わってね」
「その歯が欠けてもすぐに代わりが生えてくる」
「しかも鋭いわね」
これが鮫の歯の特徴だ。
「それこそナイフみたいに」
「そうだよ、だからな」
「そうした使い方も出来るのね」
「鮫の歯は噛むだけじゃないんだよ」
「少なくともあんたはそうした使い方が出来るのね」
「そうだよ、だからな」
それで、というのだ。
「その俺に接近戦を挑んだことは失敗だったな」
「それはどうかしらね」
菊もだった、笑って自信を見せて言葉を出した。
「忍者は逃げること、隠れることだけじゃないのよ」
「戦うこともっていうんだな」
「そうよ、それもさっきみたいに手裏剣を投げるだけじゃなくて」
「格闘もか」
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