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美しき異形達
第三十五話 月光の下でその一
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                美しき異形達
            第三十五話  月光の下で
 菊は鮫の怪人と、向日葵は鰐の怪人とそれぞれ対峙していた。その中で菖蒲は冷静な声で仲間達に言った。
「鮫も鰐もね」
「水の中にいるからな」
「本来なら陸に上がればね」
「戦闘力は落ちるよな」
 薊も菖蒲のその言葉に頷く。
「普通は」
「ただの鮫や鰐ならね」
 そうなるとだ、また言った菖蒲だった。
「止まった鮫は死ぬわ」
「鮫は泳いでいないと死にますからね」
 桜は菖蒲の言葉を受けて鮫の身体の構造から指摘した。
「普通のお魚と違って」
「回遊魚はね」
 鮫がそれだ、回遊魚は他にもいるが鮫もまたそうなのだ。ただその鮫達でもドチザメやネコザメは泳がず海底で休んでいても平気だ。
「そうよ」
「そうですね、そして鰐も」
「鰐は泳がなくても大丈夫よ」
 よく岸辺に上がって日光を浴びて休んでいる、鰐は爬虫類でエラがないのでそれで常に水の中にいなくとも大丈夫なのだ。
 しかしだ、陸に上がった鰐は。
「鰐は陸ではその大きな身体、短い足と大きな胴が邪魔で」
「動きが極端に鈍くなるのよね」
「鰐は水の中でこそ実力を発揮するわ」
 そうだというのだ、菖蒲は菫にも話した。
「あの生きものもね」
「そうよね」
「ええ、普通の鮫や鰐はね」 
 そうなるのだ、どちらにしても鮫も鰐も水中でなければその戦闘力を発揮しない。陸にいるべき生物ではないのだ。
 だが、だ。菖蒲はこうも言うのだった。
「けれどそれはね」
「あくまで普通の鮫や鰐の話だよな」
「ええ、怪人になると」
「また別だな」
「間違いなくね」
「さもないとわざわざ陸に上がって来ないな」
「彼等が何故陸に上がってきたか」
 冷静にだ、菖蒲はこのことも分析していくのだった。
「それには根拠があるわ」
「つまりその根拠は」
「陸地でもその実力を発揮出来るのよ」
「だからだよな」
「ええ、上がって来てね」
「そうして今菊ちゃん達と戦うってことか」
「そうよ、彼等は強いわ」
 それこそだ、水中の鮫や鰐と同じくというのだ。
「厄介な相手よ」
「大丈夫かしら」
 ここまで聞いてだ、裕香は曇った顔で呟いた。
「菊ちゃんも向日葵ちゃんも」
「水の中で鮫や鰐と戦う様なものだからだよな」
「うん、それでも大丈夫かしら」
「大丈夫だから出たんだよ」
 薊は笑ってだ、その裕香に言った。
「二人共な」
「勝てるから?」
「ああ、そうだよ」
 それで、というのだ。
「あたし達は見ていればいいさ」
「そうなのね」
「まあ、いざとなればな」
 若し二人が窮地に陥ればどうするか、薊はこのことも言った。
「あたしが行くよ」
「薊ちゃんが」
「ああ、
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