暁 〜小説投稿サイト〜
Lirica(リリカ)
―2―
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
ておるな?」
 ヴェルーリヤは総督に向き直り、咄嗟に反駁した。
「信仰に、人間がさだめた国の境など関わりのない事でございます」
「人が安定した世を築くには、そうも言っておれん。離れの小島にあるルフマンの神殿は、ジェナヴァの町がナエーズの支配下にあった過去の証。そのような証はセルセト国の泰平の為にならぬ。わかるか」
「セルセトの都の神官長は、ナエーズの大地は邪神に支配されし地であると正式に声明を出された」
 施術師が甲高い声で言い募る。
「そして、邪神の手先の悪しき魔物は、(おの)が欲望の為に神の名を騙るが世の常。総督閣下、夜の間にしか出歩けぬなど、如何にも魔の物の属性ではございませんか」
 ヴェルーリヤはあまりの言い草に返す言葉がない。呆然と立ち尽くし、首を横に振って、同じ言葉を繰り返すのが精いっぱいであった。
「国の境も、戦の世の習いも、神の御業とご威光の前には意味なきものにございます。根と伏流の神ルフマンは、民が心を開き信仰すれば、必ずやジェナヴァの土に豊かな恵みをお授けくださります」
「ジェナヴァの民がその信仰を受け入れると、まことに思うておるか?」
 総督は、にやりと笑い、帰れと命じた。



[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ