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ておるな?」
ヴェルーリヤは総督に向き直り、咄嗟に反駁した。
「信仰に、人間がさだめた国の境など関わりのない事でございます」
「人が安定した世を築くには、そうも言っておれん。離れの小島にあるルフマンの神殿は、ジェナヴァの町がナエーズの支配下にあった過去の証。そのような証はセルセト国の泰平の為にならぬ。わかるか」
「セルセトの都の神官長は、ナエーズの大地は邪神に支配されし地であると正式に声明を出された」
施術師が甲高い声で言い募る。
「そして、邪神の手先の悪しき魔物は、己が欲望の為に神の名を騙るが世の常。総督閣下、夜の間にしか出歩けぬなど、如何にも魔の物の属性ではございませんか」
ヴェルーリヤはあまりの言い草に返す言葉がない。呆然と立ち尽くし、首を横に振って、同じ言葉を繰り返すのが精いっぱいであった。
「国の境も、戦の世の習いも、神の御業とご威光の前には意味なきものにございます。根と伏流の神ルフマンは、民が心を開き信仰すれば、必ずやジェナヴァの土に豊かな恵みをお授けくださります」
「ジェナヴァの民がその信仰を受け入れると、まことに思うておるか?」
総督は、にやりと笑い、帰れと命じた。
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