二十一話:壊れゆく日常
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ドガーの最後のセリフをかき消す。
結局、何て言ったのかは俺には分からなかった。でもそんな俺にだって分かることがある。
木場も…ルドガーも…苦しんでいるんだ。何に苦しんでいるかは分からない。
でも…苦しんでいることだけは分かる。それなのにどうして―――頼ってくれないんだよ。
先程の木場のように止めることも出来ずにただ見送るだけの俺。
俺達……仲間じゃないのかよ…友達じゃないのかよ!
それなのに………俺は何も出来ない、友達の一人も救ってやれない……。
俺は―――弱い。
Sideout兵藤一誠
「復讐か……」
ベッドの上に寝ころびながら祐斗の言った言葉を思い出す。
奪われた大切な者の為に復讐を果たそうとする。綺麗な理由だ。
俺のように自分の為に何かをしようとするのではなく他人の為に行動を起こす。
俺にはとても真似できないことだ。俺はどこまでも利己的で、自分勝手で、自分の我儘をただ貫いてきただけだ。……他人の大切な者を理不尽に奪い去って。
本当はそんなことしたくなかった。でもやらなきゃならなかった。
自分の世界の為に、自分の大切な者の為に、ただ一つの自分の欲望の為に。
俺はやらないといけなかった……。
はは……そんな風にどれだけ言い繕っても消えないよな。
俺が犯してきた罪はさ……。ミラの世界を壊した、エルのパパを殺した、兄さんの世界を壊した。そんな俺が―――
「何かを言う資格なんて……ないよな」
祐斗は『やっぱり僕達は似ているようで似ていないんだね』と言っていたな。
ああ……全く持ってその通りだな。お互い、大切な者を失っている。
確かにその点では似ていると言えるかもしれない。でも……根本的な所で違う。
俺は理不尽に他人の大切な者を奪ってきた。祐斗は理不尽に大切な者を奪われた。
奪った側と奪われた側、似ているはずがないよな。
奪ってきた俺が被害者と同じなんて考えることもおこがましい。
もうこれ以上俺は人から大切な者を奪ってはいけない。
そう……決めていた。でも……今は迷っている。
「会いたいよ……兄さん」
銀色の時計を取り出して光にかざす。傷だらけでボロボロになった時計。
全部……俺の為に……っ。
そんな兄さんともう一度会いたいと、一緒に暮らしたいと、一緒に笑いたいと思うのはいけないことなのか。
もう一度他人の大切な者を全て奪い去って自分の願いを叶えることはいけないことなのか?
俺はただ、当たり前の平穏な日常を送りたいと思っているだけなんだよ。
それなのに、世界はそれすら許してくれない。
審判に関わらずに今の生活を甘んじて享受するか、
審判に挑んで今の全てを捨て去って過去を取り戻すか……。その選択を世界は強
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