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【銀桜】4.スタンド温泉篇
第3話「面接の基本はまず挨拶」
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クスクス】【クスクス】
 笑い声。笑い声。笑い声。
 壁に、床に、天井に、三方から這い出る無数の手。
【こいつは使えるね】
【こいつなら大丈夫だよ】
 笑いから歓喜へ変わる何百もの声。
「う、うわー」
 幾千の手が一斉に蛇の如く銀時に襲いかかり――
「兄者」

“ポンッ”

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「うるさい」
 最高潮に達した絶叫は、冷めた声で止んだ。振り返ると、仙望郷の浴衣を着た双葉が銀時の肩に手を置いて立っていた。
「ふ、双葉。オメー無事だったのか。ココはヤベェ!絶対ヤベェ!!てかお前コレ見えねェの!?」
「ああ。コイツらのことか」
 壁や天井など至る所から伸びる無数の手。普通なら悲鳴を上げるものだが、双葉は平然と眺めるだけ。逆に銀時が悲鳴を上げそうになる。
「なにフツーにしてんの。驚かねーのか?怖いだろ。怖いって言え。頼む言ってくれ」
「兄者ッ」
 どこか圧力のある声。重たい空気をまとった妹の雰囲気。
 急激な変化に押され、銀時は沈黙してしまう。
 そして一瞬の間の後、彼に降りかかったのは――
「さっきの礼はきっちり返させてもらうぞ」
殺意を秘めた絶対零度の眼光。
銀時の脳裏に先刻の露天風呂の出来事がフラッシュバックする。
グラマーなボディと女の魅力がつまった豊満な胸。それでムラムラした事実を銀時は冷汗を垂らしながら撤回した。
「ちちち違げェよ!やましい気持ちじゃねェって!見たくて入ったわけじゃ……」
「わかっている。ま、今はそれ所でもないからな」
そう言って双葉は後ろを向き、つられて銀時も目を向ける。

 “パチパチパチ”
“パチパチパチ”
 “パチパチパチ”

「ハ〜〜イ、おめでとォ〜。面接合格〜」
 兄妹を出迎えるお岩と無数の手が生み出す拍手の連鎖。
 それに呼応するかのように、双葉の口元に不敵な笑みが浮かぶ。
「え?」
 そんな妹とは逆に、兄の口元はひきつるだけだった。

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=つづく=
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