第1章 追放の身
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ぽかん。
一瞬の沈黙。
「……ソーラ、話がある。」
「ど、どうしたのそんな顔しちゃって……凄く暗い雰囲気…だし。」
「…座るんだ。」
有無を言わせないとばかりの父さんの声に、屈して近くの椅子に座る。
「…ヴァリが、これを発見した。何か、わかるか。」
差し出されたのは古い書物……今ローマで使われている、羊皮紙とか木札とは違った手触り。
パラパラとめくると、解読不能な絵文字が現れた。 珍しいことに縦書きのようだ。
「文字が…。」
「そうだ。文字が読めぬ。わが家に残るすべての暗号パターンや、思い付く限りの古代文字を調べたにも関わらず、解読できぬ。」
「そんな…、」
「唯一わかったのは、エジプト古代文字とにていると言うことだ。ヒエログリフ、神聖文字と言えばわかるか。」
「え、エジプト?」
「うむ。そこで問題なのは、わが家にはヒエログリフを解読できるものがおらぬと言うことだ。」
「…じゃあ、諦めるしかないじゃない。」
「それがそうでもないのだ。恐らく………これを解くことのできる人物が、この世に一人だけいる。」
「…いるの?」
「ああ。そこで、お前…ソーラに、これをもって会いに行ってほしい。場所はエジプト。アスワンのイシス神殿を目指せ。」
「アスワン?どこだったっけ…」
「ほら、地図だ。」
大きな地図がくるりと開かれる。
地中海を真ん中に、ガリアの地、ペルシア、ユダヤの地、そしてエジプトが描かれている。
そしてその大部分はローマ帝国の支配下にある。
「ナイル川沿い…中流か…。」
「うむ。」
「って、待てよ!?遠くない?!」
「ああ。大変だが頑張ってほしい。一年かかるかもしれぬが…それでもよい。」
「その人って…神殿にいけばわかるの?」
「そうだろう。今ではエジプトはわがローマ帝国の領有地。見る影もない古王国の遺産のイシス神殿に誰が住まおうか。」
「なるほどね。いけばわかるのね。遠いみたいだしサッサと出発しようかしら。そうすれば」
「リノスの家長就任式に出ないのは許さぬ。」
「……はーい。」
ちっ。ばれたか。
ヤルコトノナイ祝い事なんか出ないでやる、とか決意してたのに。
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