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駄目親父としっかり娘の珍道中
第68話 女の子は父親似の男に惹かれるんだってさ
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「宇宙ってのは、簡単に言っちまえば果てしない大海原みてぇなもんさ。何処まで行っても満点の星空が輝く海。上を見ても下を見ても、何処を見ても星ばかり。此処から見える月も、宇宙に行けば直に触れる事だって出来る。そんな場所なんだよ」
「一面星だらけで、あの月にだって触れるって……すっっっっごい楽しそう!」
「あぁ、宇宙を泳いでる時だけは不思議と楽しいもんさ。何も聞こえない宇宙の中を泳ぐ。その快感を知っちまったら、尚更だしな」
「へぇ、宇宙ってすごいんだねぇ。私初めて知ったよ! 今までずっと江戸しか見た事なかったんだけど……あ、後海鳴って言う港町も知ってるよ。だけど、宇宙ってそんなに広いんだねぇ。どれ位広いの? このかぶき町と同じ位?」

 両手を目一杯広げて広さを体現して見せる。そんななのはを見て男はクスリと笑って見せた。

「そんなに狭い訳ぁねぇだろ? 宇宙はそれこそ果てしなく広いんだ。かぶき町どころか、この江戸を何百個並べたって足りねぇ位広いんだよ」
「そんなに広いんだ……良いなぁ良いなぁ。宇宙って凄いんだなぁ」

 なのはは今興奮の絶頂にあった。ついさっきまで一人ぼっちの寂しさと不安の板挟みになっていた寂しん坊で傷つきやすいガラスのハートは男との会話により蒸気機関車の薪をくべる炉みたいな奴なみにカッカしていたのであった。
 何時の間にか頬の辺りが紅く紅色に染まりだし、瞳の輝きはより一層強さを増し、興奮の勢いはその両手にも露わになる程であった。
 そんな興奮しまくるなのはを見て、男は膝を折り曲げ、なのはと目線を合わせた。
 互いの息と息がぶつかり合う位の距離で両者は見つめ合った。

「どうだ、俺と一緒に来ないか?」
「え?」
「お前が一生掛かっても見られないような物を……俺が見せてやる。今の親父の所に居るよか断然面白い人生になると思うぜ」
「お父さんと一緒に居るよりって―――」

 その言葉を聞いた途端、なのはの今まで興奮しまくっていた心が急にしぼみ始めた。その言葉をそのままの意味とするならば、それは即ち銀時との別れを意味している。
 かつて、生まれて間もなくして江戸に捨てられていた赤子だった自分を此処まで育ててくれた男、坂田銀時。
 その銀時と別れをしなければならないと言う事になる。それを知ったなのはは、もうさっきの様にはしゃぐ事は出来なかった。
 確かに、広大な宇宙にはロマンや魅力を感じる。だが、それを得る為には最愛の父を捨てねばならない。
 ロマンを選ぶか家族を選ぶか。幼い子供には辛い選択であった。

「う……うぅぅぅぅぅ―――」

 必死に悩むあまり頭を抱えてしまっているなのはを見てか、男は少し申し訳なさそうに頬を指で掻いた。

「ま、そう思いつめるな。俺も少し答えを急ぎ過ぎたかも知れねぇ
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