暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
人間はいつだって解読不可能な怪物である
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 歪んだ少年は、己の過去を振り返る。

 幼い頃から始まっていた自身の特異体質。飼い犬は愚か、クラスメイトや教師も自分を避けていた。両親はどうだったろうか。ちゃんと愛してくれただろうか?

 何が原因なのかは分からない。そもそも原因なんてない気がする。仮に自分の思いこみだとすれば、この世はどれほど自分に無情なのだろう。それでも、少なからず理解していたのは、自分の中には自分以外の誰かが写っていなかったという事だ。

 いつも大人しくて他人思いの少年。けれどそんなのは上辺だけで、自分はもっと利己的な人間だ。
最初こそ、内奥からの善意で誰かに手を差し伸べた。けれど他人は、そんな自分を見てくれなかった。それに焦りを覚えて、次は意識的な善を振り撒いた。誰に対しても優しい、天衣無縫という言葉を具現化したような存在。しかし、自分の周りに『誰か』が溢れる事はなく、いつだって一人だった。

 いつ頃からか、友達を求めるのを諦めた。そういう運命なのだと割り切った。

 そんなときだ。彼女が目の前に現れたのは。

 常に『探究心』と『知る欲求』を忘れない彼女の笑顔は眩しくて、同時に羨ましかった。日々新しい風を浴びるというのは、一体どういった感覚なのか。彼女に聞いても『そんなの知らないよ』と笑うばかりで、良い答えは聞き出せなかった。

 しかし、そんな彼女の笑顔はもうどこにもない。日本の裏に行っても太平洋を泳いでも宇宙に到達しても、結果はいつでも久遠なままだ。

 それでも彼女は最後にこう言った。

 『自分は強いって思えばいいの』

 自分と同じようで決定的に違う面を持つあの少年はこう言った。

 『仮に足を洗えたとしても、その罪は一生お前の後ろに着いて来て離れないぜ』

 そして少年は、一つの結論に辿り着いた。

 ああ、自分は今まで勘違いをしていたんだな、と。

 自分は強い。彼女が発したそれは、恐らく精神的な意味での言葉だったのだ。しかし少年は、そのとき殺し屋の話題をしていた事もあって、物理的、肉体的なものだと勘違いしてしまった。彼女が殺し屋に殺されたのは悪い意味でのベストタイミングで、少年に宿る復讐の脈は全身を伝ってその念を増幅させてきた。

 なんて皮肉な話だろう。彼女の言葉、殺し屋、そして自身が編み出した思い違い。それらが交錯し合った結果が、こんなにも無意味な物語を紡がせてしまったのだ。

 もしかすると、彼女が最後に残した言葉は少年への遺言だったのかもしれない。殺し屋に命を奪われてしまう結末をシャーペンの芯ほど細く予感していたからこそ、あの言葉を自分に託したのかもしれない。だとすれば――僕は間違っていない。やり方としては最悪だが。

 少年は過去を振り返り、そして前を見た。

 もう元には戻れ
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