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横浜事変-the mixing black&white-
人間はいつだって解読不可能な怪物である
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ない。いつになく意識を込めたその言葉は、やはり果てしない残酷性を備えていた。
*****
横浜某所
ケンジは、右肩から指の先まで伝わる麻痺に似た感覚を無理やり奥に押し込み、肩から血を流す大河内にもう一度銃口を向けた。
「……きっと彼女は、僕がこんな姿になる未来すら見据えていたのかもしれません。でも、彼女の真意を取り間違えた僕は、今や立派な人殺しだ」
――そうだ、殺す以外の道だってあった筈だ。そういう意味では、僕は彼女を笑わせることはできない。
「ハハッ……どうだろうね。君の精神年齢が幼すぎるのを見越していて『自分がいなくても頑張れ』って意味で言ったんじゃないの?」
荒い息を吐く大河内は頬をピクピクとひくつかせながら、それでも表情に笑顔を張り付けていた。そんな彼にケンジは笑い返した。
「ああ、その可能性もありますね。僕は幼すぎるから……」
その直後、虚空に乾いた単発音と大河内の呻き声が響いた。ケンジは銃を左手に持ち替え、右肩をグルリと回した。
「威力が弱い銃で肩が痛くなるんだから、まだまだだなあ」
「……そう言っておいて当てるなんて、ずるくないかい」
腹を穿たれた殺人鬼の声を黙殺したケンジは、再び右手に拳銃を持ち替える。そして、ゆっくりとした足取りで大河内の方へ歩み始めた。その目は何も映しておらず、この世の全てを放棄していた。
大河内が片膝を地に着けた状態でケンジを見据え、震える腕を彼に差し向けた。その手には銃が弱弱しく握られており、銃口がケンジを捉えられずにいる。
「まったく、こんな終わり方は予想していなかったよ……」
「僕も、大河内さんが『殺し屋の電話番号』を出回せていたなんて思いませんでした」
ケンジは大河内と2メートルほどの距離を空けて足を止めた。そして静かな声で問い掛けた。
「どうしてあんなことをしたんですか。教えてください」
「嫌だ、って言ったら……つぁッ!」
大河内は目を見開き、次いで口内から大量の血を吐き出した。左腕にはたった今ケンジが投げた鋭敏なコンクリートの破片が突き刺さり、服に赤色の華が咲き始めている。
「……」
「本気、だね。……俺がああいうことをしたのは単純な話で、ヒマだったんだ。だから殺った。そうしたら自分がステージに立っているような気がして……もう止められなかった」
大河内の手から拳銃が零れ落ちた。それは乾いた音を立ててアスファルトの地を打ち、大河内の降伏を暗に示していた。
「あるとき俺のSNSアカウントに接触があった。それが局長だというのはさっき知ったよ。彼が何を目的に計画を発動し、俺を手駒にここまでやって来たのかは分からない。でも俺はここで死ぬ。さあ
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