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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十七話 キフォイザー星域の会戦
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」
「旗艦の名前が良かったという事はないか?」
「そうかもしれません。ゲンドゥル、魔力を持つ者という意味ですから」
思わず笑い声が出た。ザッカートも声を合わせて笑う。
ゲンドゥルはノルン級をベースに造られたため改ノルン級と言われている。違いは殆ど無い、側面砲塔や大気圏航行用の大気取り入れ口が隠見式になっただけだ。だがその分だけ防御力は上がっている。ブラウンシュバイク公が口惜しがっていたな。ゲンドゥルは私が旗艦として使っているが二番艦ランドグリーズ、三番艦ヒルドはグライフス、ヴァルテンベルクが旗艦として使っている。
「それにしても門閥貴族というのは評価が低いな」
「宜しいでは有りませんか、その御蔭で敵を騙せました」
「まあそうだが、余り嬉しくは無いぞ、ザッカート」
「ヴァレンシュタイン提督の提案に一番乗り気だったのは侯爵閣下です」
「そうだったか」
今度は苦笑が漏れた。全く、とんでもない男だ。わざと烏合の衆に見せかけて敵を油断させろとは。まともな軍なら有り得ないが門閥貴族の軍なら有り得ると平然と言いおった。
「どうかな、我らだけで勝てるかな?」
ザッカートが笑みを浮かべながら首を横に振った。
「なかなか、そこまで甘くは有りません。押す事は出来ますが打ち破るとなると」
「難しいか」
「はい」
やれやれだ、兵力はこちらが多いのだがな。門閥貴族の評価が低いのも無理は無いか。
「ではあの男が来るのを待つしかないな。今頃はこちらへ急いでいるだろう」
「はい、我々は益々攻撃を強めて敵を防御で手一杯にする必要が有ります」
「そうだな、グライフス、ヴァルテンベルクにも攻撃の手を緩めるなと伝えてくれ」
「はっ」
帝国暦 488年 9月 23日 キフォイザー星域 ワーレン艦隊旗艦 サラマンドル アウグスト・ザムエル・ワーレン
「敵、攻勢を強めて来ます!」
「総司令部より入電、無理をせず後退せよとの事です!」
「ルッツ艦隊より入電! 我後退す、貴艦隊も後退されたし!」
「了解と伝えろ。参謀長、艦隊を後退させろ」
「はっ」
リッテンハイム侯の艦隊が押してくる。密集隊形だが中央にリッテンハイム侯、右翼にグライフス大将、左翼がヴァルテンベルク大将の様だ。状況は良くない、開戦以来八時間が過ぎたが敵に押される一方だ。艦橋はそれへの対応に追われる声が飛び交っている。
艦隊数で劣勢で兵力でも劣勢なのだから仕方が無い事では有る。痛いな、兵力差も痛いが艦隊数が少ないのはそれ以上に痛い。こちらも三個艦隊有ればもう少し楽に戦えたのだが……。愚痴っても仕方が無い、隙を見て敵を崩す、それに乗じて敵を撃破する。
しかし何処で敵を崩すか、このままでは敵艦隊に為す術も無く押し潰されるだろう……。一
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