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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十七話 キフォイザー星域の会戦
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いなかった。ローエングラム侯が最高司令官として処理する事は可能な筈だ。脅しには屈しない、反逆者との間に交渉は無い、そう言い切れたのだ。
「総参謀長はローエングラム侯に話しをされたのですか?」
「そうらしいな、ケスラー提督が総参謀長に確認したらしい。話はしたそうだ」
「今更では有りますが事前に話をしておけば……」
「話せなかったんだろうな、あの男には。ローエングラム侯に受け入れて貰えないと思ったか、或いは侯を苦しめたくない、そう思ったのか。……優しいのかな?」
ビッテンフェルト提督が首を傾げた。あの総参謀長が?
「……優しい、ですか」
「ああ、ローエングラム侯には自分で話すと言っただろう。初めは自分がやった事だから責任を取るのかと思ったが……」
「そうではないと?」
俺が問うとビッテンフェルト提督が頷いた。
「ローエングラム侯が混乱するところを俺達に見せたくなかったのではないか、なんとなくだがそう思った。夫人の件でローエングラム侯が混乱するのは最小限に留めたいとも言っていたしな」
「そういえばそうですね」
あの総参謀長が? そんな気遣いを? ちょっと可笑しかった。いや、ビッテンフェルト提督がそんな風に考えるのも可笑しい。
「まあ俺がそう思っただけだ。本当は俺達の離反を防ぐため、そう考えたのかもしれん」
「……離反ですか」
「指揮官が精神的に弱くては安心して付いていけんだろう」
「まあ、そうかもしれません」
ちょっと拙い方向に話しが進んでいる。
「辺境で勝てれば良いんだが……」
「そうですね」
「負ければオーディンで騒乱が起きる可能性も有る」
「ええ」
ビッテンフェルト提督が俺を見た。厳しい眼だ、身の引き締まる思いがした。
「ローエングラム侯だけじゃない、俺も卿も厳しい選択を強いられるかもしれんぞ」
寝返り、降伏を考えているのだろうか。
「戦いたくても戦えない状況になる可能性も有る。そうなれば意地も通せん」
そうか、部下の離反、それは俺にも言える事か……。
「覚悟だけはしておいた方が良いだろうな」
「そのようですね」
帝国暦 488年 9月 23日 キフォイザー星域 リッテンハイム艦隊旗艦 ゲンドゥル ウィルヘルム・フォン・リッテンハイム三世
「敵、後退します!」
「うむ、全艦に命令。攻撃の手を緩めるな!」
「はい!」
参謀長のザッカートの命令にオペレータが嬉しそうに頷いた。ふむ、優勢な所為だろう、艦橋の空気は悪くない。戦術コンピュータには後退する敵と前進する味方の様子が映っている。
「ザッカート、味方が優勢だな」
「はい、敵は艦隊を自在に操れぬようです。どうも編成を誤ったようですな」
「上手く騙せたという事か?」
「そのようです
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