第3部 始祖の祈祷書
最終章 虚無
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くわ!」
ウルキオラはそんなルイズの声を気にも留めず、操縦桿を左に倒した。
探査回路が十一騎の竜騎士を捉える。
機体がくるりと回転する。
ゼロ戦の腹の部分に、ぶおっと火竜のブレスが通過する。
ルイズがきゃあ!と叫んで機体の中を転げまわる。
「もっと丁寧に操りなさいよ!」
ウルキオラは無茶言うなと小声で言って、回転させた機体を急降下させた。
それでもう、竜騎士は追随できない。
その勢いで機体を上昇させ、頂点で失速反転。
太陽を背にして降下する。
追いかけてきた竜騎士たちめがけて、散々に機関砲弾と機関銃を叩き込む。
機体の中で転がるルイズは、怖くて泣きそうだった。
やっぱり来なきゃよかった、と恐怖が心を掴もうとする。
唇をぎゅっと噛み、『始祖の祈祷書』を握りしめた。
ウルキオラ一人を戦わせはしない、そう思ったからこそ、乗ったのではないか。
なによ、とルイズは思った。
自分一人が戦ってるような顔しないでよ。
私だって、戦っているんだから!
といっても、今の自分はまったくすることがない。
いつも大体そうだが、なんだか悔しい。
とにかく恐怖に負けては始まらない。
ポケットを探り、ルイズはアンリエッタからもらった『水』のルビーを指に嵌めた。
その指を握りしめる。
「姫様…ウルキオラと私をお守りください……」と呟く。
右手に持った始祖の祈祷書を左手でそっと撫でた。
結局、詔は完成しなかった。
自分の詩心のなさをルイズは呪う。
馬車の中で詔を考えようと、手に持っていたのである。
そうだ。
姫様の結婚式に出席するために、自分たちは魔法学院で馬車を待っていたのである。
それなのに、いつの間にか戦争している。
運命とは皮肉なものだわ、と呟きながら、『始祖の祈祷書』を開いた。
ほんとに、他意なく開いた。
だからその瞬間、『水』のルビーと『始祖の祈祷書』が光りだし、意識が朦朧としたとき、心底驚いた。
「全滅……、だと?わずか十二分の戦闘で全滅だと?」
艦砲射撃実施のため、タルブの草原の上空三千メイルに遊弋していた『レキシントン』号の後甲板で、トリステイン侵攻軍総司令官サー・ジョンストンは伝令からの報告を聞いて顔色を変えた。
「敵は何騎なんだ?百騎か?トリステインにはそんなに竜騎兵が残っていたのか?」
「サー。そ、それが……、報告では、敵は一騎であります」
「一騎だと……?」
ジョンストンは、呆然と立ちつくした。
直後、かぶった帽子を甲板に叩きつける。
「ふざけるなっ!ニ十騎もの竜騎士が、たったの一騎に全滅!?冗談
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