第3部 始祖の祈祷書
最終章 虚無
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の準備を進めていた。
タルブの村の上空を警戒していた竜騎士隊の一人が、自分の上空、二千五百メイルほどの一点に、近づく一騎の竜騎士兵を見つけた。
竜に跨った騎士は竜を鳴かせて、味方に敵の接近を告げた。
ウルキオラは風防から顔を出して、眼下のタルブの村を見つめた。
この前見た、素朴な村は跡形もなかった。
家々は黒々と焼け焦げ、黒い煙が立ち昇っている。
ウルキオラは胸が痛むのを感じた。
なんの痛みなのかわからなかった。
草原を見た。
そこは、アルビオンの軍勢で埋まっていた。
この前、二人で紅茶を飲んでいた時のことを思い出した。
シエスタの言葉が蘇る。
『何にもない、辺鄙な村ですけど……、とっても広い、綺麗な草原があるんです。春になると、春の花が咲くの。夏は、夏のお花が咲くんです。ずっとね、遠くまで、地平線の向こうまでお花の海が続くの。今頃、とっても綺麗だろうな……』
美しかった村のはずれの森に向かって、一騎の竜騎兵が、炎を吹きかけた。
ぶわっと、森は激しく燃え上がった。
心臓がドクンと跳ね上がる。
ドス黒い何かが、ウルキオラの頭の中を支配する。
「不愉快だ…」
低く唸った。
ウルキオラは操縦桿を左斜め前に倒した。
スロットルを絞る。
機体を捻らせ、タルブの村めがけてゼロ戦が急降下を開始した。
「一騎とは、なめられたものだな」
急降下してくるゼロ戦を迎え撃つため、竜を上昇させた騎士が呟く。
しかし、ずいぶんと見慣れない形だ。
まっすぐに横に伸びた翼は、まるで固定されたように羽ばたきを見せない。
しかもずいぶんと聞きなれない轟音を立てている。
あんな竜、ハルケギニアに存在していただろうか?
しかし……、どんな竜だろうが、アルビオンに生息する『火竜』のブレスの一撃を食らったら、ただでは済まない。
羽を焼かれ、地面にたたきつけられるだろう。
彼はそのようにして、すでに二騎、トリステインの竜騎兵を撃墜していた。
「三匹目だ」
唇のはしを歪めて、急降下してくるゼロ戦を待ち受ける。
驚く。
速い。
竜とは思えない速さだ。
慌てて、ブレスを吐くために火竜が口を開けた。
その瞬間、急降下してくるゼロ戦の翼が光った。
白く光る何かが、無数に飛んでくる。
バシッ!バシッ!と騎乗する竜の翼に、胴体に、大穴があいた。
一発が開いた火竜の口の中に飛び込む。
火竜の喉には、ブレスのための、燃焼性の高い油が入った袋がある。
喉の奥で機関砲撃が炸裂し、その袋に引火した。
火竜は爆発した。
空中爆発した竜
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