第3部 始祖の祈祷書
最終章 虚無
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ウルキオラたちが乗ったゼロ戦であった。
マザリーニは大声で叫んだ。
「諸君!見よ!あれがトリステインが危機に陥った時に現れる、伝説のフェニックスですぞ!」
いたるところから歓声が漏れる。
「うおおおおおおおおおぉ!トリステイン万歳!フェニックス万歳!」
アンリエッタは、マザリーニにそっと尋ねた。
彼女は十二の艦隊が沈んだ時に空を包んだ緑色の光に見覚えがあったからだ。
「枢機卿、フェニックスとは……、真ですか?伝説のフェニックスなど聞いたことがありません…あれは…」
マザリーニはいたずらっぽく笑った。
「真っ赤なウソですよ。しかし、今は誰もが判断力を失っておる。目の当たりにした光景が信じられんのです。この私とて同じです。しかし、現実に敵竜騎士は全滅し、レキシントン号を含む十三の艦隊も撃沈。あのように報告にあった竜が舞っているではござらぬか。ならばそれを利用せぬという法はない」
「はぁ…」
「なあに、今は私の言葉が嘘か真かなど、誰も気にしませんわい。気にしているのは生きるか死ぬか。そして、勝つか負けるか、ですぞ」
マザリーニは王女の目を覗き込んだ。
「使えるものは何でも使う。政治と戦の基本ですぞ。覚えておきなさい殿下。今日からあなたはこのトリステインの王なのだから」
アンリエッタは頷いた。
枢機卿の言うとおりだ。
考えるのは……、あとでいい。
枢機卿は前方のアルビオン軍に向き直った。
その距離は百メイルにまで近づいていた。
「敵は我々以上に動揺し、浮足立っておるに違いありません。なにせ、頼みの艦隊がすべて撃沈したのですから。あとは、目の前の敵だけです」
「はい」
「殿下。では、勝ちに行きますか」
マザリーニが言った。
アンリエッタは再び強く頷くと、水晶光る杖を掲げた。
「全軍突撃!王軍!我に続け!」
ルイズはぐったりとして、ウルキオラに寄り添っていた。
「ルイズ」
「ん?」
ルイズはぼんやりと返事をした。
体中を気だるい疲労感が包んでいる。
しかし、それは心地よい疲れだった。
何事かをやり遂げたあとの……、満足感が伴う、疲労感だった。
「気分はどうだ?」
ルイズははぁ、と溜息をついた。
「悪くないわ」
「そうか…」
眼下では、タルブの草原に布陣したアルビオン軍に、トリステイン軍が突撃を敢行したところだった。
トリステイン軍の勢いは、もはや素人目にも明らかであった。
数で勝る敵軍を、逆に押しつぶしてしまいそうな勢いだった。
黒く焼け焦げた村を見た。
シエスタの顔が浮かぶ。
無事だろうか。
この時、既にウル
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